賃上げとは?過去推移や求められる背景、企業への影響を紹介
近年は、物価上昇や採用競争などの影響で賃上げを行う企業が増えています。
政府は企業に対して積極的な賃上げを求めており、2024年は春季賃上げ率が5%を超えるなど、今後も賃上げを推し進める流れは持続すると考えられます。
今回は、賃上げのこれまでの推移や求められる背景、賃上げを実施することによる企業への影響などを紹介します。
賃上げとは?
賃上げは、企業が従業員に支払う給与額を増やすことです。
賃上げには、定期昇給とベースアップの2つの方法があります。
- 定期昇給:企業が定めた期間・頻度で、年齢や勤続年数・役割・評価などによって定期的に行われる昇給
- ベースアップ:評価等に関わらず、対象の従業員全員のベースの給与を上げること
賃上げは、定期昇給やベースアップ片方だけを実施する企業もあれば、定期昇給とベースアップの両方を実施する企業もあります。
これまでの賃上げの推移
労働政策研究・研修機構(JILPT)が公表している大企業の春季賃上げ額と賃上げ率は、下記のようになっています。
年 | 春季賃上げ額 | 春季賃上げ率 |
2015年 | 7,367 | 2.38% |
2016年 | 6,639 | 2.14% |
2017年 | 6,570 | 2.11% |
2018年 | 7,033 | 2.26% |
2019年 | 6,790 | 2.18% |
2020年 | 6,286 | 2.00% |
2021年 | 5,854 | 1.86% |
2022年 | 6,898 | 2.20% |
2023年 | 11,245 | 3.60% |
2024年 | 17,415 | 5.33% |
賃上げが求められる背景
上の表のように、2023年より前は、賃上げ率は2%前後と、日本企業は賃上げに対して消極的でした。
理由としては、一度給与を上げてしまうと、従業員の給与を下げるということは簡単にはできないためです。
同様にベースアップにしても一度全員のベースを上げてしまうと、固定費が上がってしまいますので、企業の業績が悪化した際には、経営の重荷になってしまいます。
近年、特に2024年から大幅に賃上げをされた背景としては、「若年層の労働人口の減少による採用確保」「物価上昇への対応」などが代表的な理由として挙げられます。
優秀な人材を確保するために、各社では給与額を高く設定することが続いており、新卒入社の社員の初任給も大幅に引き上げる企業も増えています。
賃上げを行うことによる企業への影響
賃上げをすることによる企業への影響を紹介します。
人件費や社会保険料の負担増加
賃上げを行うことによって人件費が増加する他、社会保険料の事業主負担も増加します。
企業としては、利益率の低下や利益額の減少などを余儀なくされ、企業経営に大きな影響を与えます。
採用魅力度のアップ
賃上げによってこれまでよりも初任給や中途募集の給与が上がることによって、採用魅力度が上がる可能性があります。
ただ、競合他社の金額や上げ幅によってはむしろ賃上げしても魅力度が上がらない可能性もあります。
従業員のモチベーション向上
従業員の手取りの給与が増えるため、業務へのモチベーションが向上することが考えられます。
商品やサービスへの価格転嫁が必要
企業としては、賃上げして人件費等の負担が増えた分、商品やサービスの価格を上げなければ、賃上げするたびに利益額が減少し、利益がでなくなってしまいます。
人件費が増加した分、売上や利益を確保できるような動きが必要です。
賃上げを行わないことによる企業への影響
賃上げを行わないことによる企業への影響を紹介します。
従業員の不満増加、離職
他社が数パーセントの賃上げをしているのにも関わらず、賃上げをしない場合は、従業員の不満が増加し、離職に繋がってしまう可能性があります。
新規採用が難しくなる
新規採用で提示している金額次第ではありますが、他社が募集している水準よりも低い金額の場合は、採用どころか応募すらこない可能性もあります。
会社の評判が下がる
今いる従業員や元いた従業員が、あの企業は賃上げをしないということを口コミサイトに記載したり、周囲に言い広めることで、会社の評判が下がる可能性があります。
賃上げに伴い、人事が行うべきこととは?
賃上げを会社に検討・実施してもらうために人事がやるべきこととしては、大きく7つあります。
- 賃上げに関する他社や全体の状況に関するデータを集めて、経営に共有する
- 賃上げ素案で入社年や年齢による逆転現象が発生していないかを確認する
- 賃上げが確定したら、必要に応じて人事規程や賃金規程の内容を修正する
- 初任給が変更になった場合は、求人サイトのデータを更新する
- 中途募集の給与が変更になる場合は、求人サイトのデータを更新する
- 提携している転職エージェント会社がある場合は、賃上げの件を共有する
- 従業員に賃上げの内容や目的などを説明する
賃上げの具体的な内容を決定するために必要な情報を集めて提供すること、賃上げの内容が決まったら内容を確認し、社内外の関係者に共有すること、必要に応じて規程を更新することなどが必要です。
賃上げに関する他社動向の情報を収集し、商品への価格転嫁などの対策も講じましょう
今回は、賃上げのこれまでの推移や求められる背景、賃上げを実施することによる企業への影響などを紹介しました。
他の企業や日本全体として賃上げをするのであれば、自社もそれに追随しないと、給与差が生じてしまい様々なデメリットが考えられます。
ただ企業はいくらでも賃上げに対応できる体力がある訳ではないので、自社で様々な点を判断することが求められます。
ぜひ、今後も賃上げに関する情報収集を行うとともに、商品やサービスの価格に転嫁するなど対策を講じてはいかがでしょうか。