業界別の離職率ランキング|離職理由・対策、おすすめツールまとめ
業界によって離職率や入職率、若手新入社員の離職率は大きく異なり、業界ごとのビジネスモデルや業務内容、業界特有の課題などで差が生まれています。
日本において離職率が高い業界、離職率が低い業界はどこでしょうか。
今回は、業界別の離職ランキングや離職理由と対策、おすすめのツールなどについて紹介します。
業界別の全体の離職率ランキング
2023年に厚生労働省が発表した「令和4年 雇用動向調査結果の概要」の集計結果を元に、業界別の離職率ランキングを離職率が高い順に紹介します。
- 宿泊業・飲食サービス業:26.4%
- サービス業(その他):19.4%
- 生活関連サービス業・娯楽業:18.7%
- 医療、福祉業:15.3%
- 教育、学習支援業:15.2%
- ★全体平均:15.0%
- 卸売業・小売業:14.6%
- 不動産業・物品賃貸業:13.8%
- 運輸業・郵便業:12.3%
- 情報通信業:11.9%
- 複合サービス事業:11.0%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:10.7%
- 建設業:10.5%
- 製造業:10.2%
- 学術研究,専門・技術サービス業:10.0%
- 金融業・保険業:8.3%
- 鉱業,採石業,砂利採取業:6.3%
業界全体の離職率の平均値を超えたのは、「宿泊業・飲食サービス業」「サービス業(その他)」「生活関連サービス業・娯楽業」「医療、福祉業」「教育、学習支援業」となっています。
業界別の新卒3年以内の離職率ランキング
業界別の新卒入社3年以内の離職率のランキングを紹介します。
2023年に厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」の集計結果を元に、業界別の新卒入社後の3年以内での離職率が高い順に紹介します。
- 宿泊業・飲食サービス業:51.4%
- 生活関連サービス業・娯楽業:48.0%
- 教育、学習支援業:46.0%
- 医療、福祉業:38.8%
- 小売業:38.5%
- サービス業(その他):37.3%
- 不動産業・物品賃貸業:35.9%
- ★全体平均:32.3%
- 学術研究,専門・技術サービス業:31.9%
- 建設業:30.1%
- 卸売業:29.6%
- 運輸業・郵便業:28.3%
- 複合サービス事業:28.0%
- 情報通信業:27.9%
- 金融業・保険業:26.3%
- 製造業:19.0%
- 鉱業,採石業,砂利採取業:13.5%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:10.5%
前述の全体の離職率が高い業界は、新卒入社3年以内の離職率も同様に高い傾向にあり、「宿泊業・飲食サービス業」では、3年以内に半分以上の新卒社員が離職する結果が出ています。
日本企業の主な離職理由
日本企業における離職者の主な離職理由について紹介します。
厚生労働省が公開した離職理由の調査データでは、離職理由として多い順に下記のようになっています。
- 労働条件(賃金以外)がよくなかったから:27.2%
- 満足のいく仕事内容でなかったから:26.7%
- 賃金が低かったから:24.9%
- 会社の将来に不安を感じたから:24.3%
- 人間関係がうまくいかなかったから:17.7%
- 能力・実績が正当に評価されないから:15.8%
- 他によい仕事があったから:15.2%
離職理由として多いのは、「労働条件」「仕事内容」「賃金」「会社の将来性」「人間関係」「評価への不満」です。
企業としても、入社時に労働条件や給与面をきちんと確認して条件を擦り合わせること、仕事内容や会社の将来性について経営者や上司がやりがいや方向性を説明することで離職率を低減できると考えられます。
離職率が高い業界の特徴、共通点
離職率が高い業界の特徴や共通点を紹介します。
BtoCの業界
離職率が高い業界の大半は、BtoC(Business to Customer)の業界です。
直接個人に対してサービスを提供する仕事であるため、対人関係やクレーム、ハラスメント等によるストレスが貯まりやすい傾向にあります。
また下記記載の土日祝日の勤務が多いことや稼働時間の割には手取り給与が低いこともBtoC業界に多いです。
土日祝日の勤務が多い
宿泊業や飲食業、娯楽業などは、オフィスワーカーが休みの時間である、平日の夜や土日祝日が稼働のピークであるため、シフトも土日祝日が多くなります。
友人や家族と遊ぶ予定を立てにくいこと、好きなアーティストのライブや大きなイベントにも参加しにくいことなど、プライベートが充実しないことに対して不満が溜まって、離職に繋がってしまいます。
給与水準が低い
労働時間が長く、夜や土日祝日の勤務が多いにも関わらず、その割には給与が低い傾向にあります。
あくまでも業界全体の傾向ですが、給与が低く、今後もなかなか上がらない懸念から、給与面を重視する人は、離職に繋がってしまいます。
離職率が低い業界の特徴、共通点
離職率が低い業界の特徴や共通点を紹介します。
BtoBの業界
離職率が低い業界は、金融・保険業を除けば、「建設業」「製造業」「学術研究,専門・技術サービス業」「金融業・保険業」「鉱業,採石業,砂利採取業」などとBtoBの法人同士の取引がメインの仕事が多いです。
BtoBの仕事は、土日祝日の休みが多いこと、残業時間も法対応などで少ないこと、クレームが対個人の仕事と比べて少ないことなどから、長く働き続けやすいとされています。
休暇を取得しやすい
企業間の取引が多いため、基本的に休みは土日祝日であることが多いです。
また、法人であれば自分が休んだとしても他の人が対応できるような仕組み化されていることも多く、有給休暇を比較的取得しやすい傾向にあります。
給与水準が高い
離職率が低い業界や企業では、給与水準が高いことや手当・福利厚生が充実していることが多いです。
日々の生活を送る中で給与は非常に重要で、その会社に長く勤めて活躍するほど給与が高くなることも定着率を高めることに繋がります。
人材教育の制度や環境が整備されている
離職率が低い業界や企業では、人材育成や教育を支援する環境が整っている傾向にあります。
研修制度や資格取得支援などを充実させることで、従業員と会社の両方の成長に繋がり、従業員も仕事のレベルやスキルが上がることによって、より大きなやりがいを得ることにも繋がります。
離職率が高いことのリスク・デメリット
離職率が高いことのリスクやデメリットを紹介します。
人材確保が難しく、既存社員への負担が大きくなる
従業員の離職が発生すると、その退職する人がやっていた業務を一時的に他の既存社員で対応する必要があり、業務負荷が高くなります。
離職率が高ければ、その一時的な業務代行が常態化してしまい、常に従業員の負荷が高い状態が続いてしまうため、次の離職を生んでしまう原因になります。
採用・教育コストが高くなる
退職者の補填採用のために、各種求人広告の出稿や転職エージェントへのフィーの支払いで採用活動に多額のコストが発生します。
また、採用後も入社後の研修や既存の従業員からの業務引継ぎなどの教育コスト、工数がかかってしまい、会社への負担も少なくありません。
社内に業務のノウハウが貯まらない
従業員が定着しなければ、業務のノウハウが上手く引き継がれず、会社にノウハウが蓄積されません。
人が変わっても同じようなミスが発生したり、なかなか売上や利益率が向上しない原因にもなり、顧客満足度の低下や業績の悪化に繋がりかねません。
企業のイメージ低下に繋がる
離職率が高く、人が次々と辞めてしまう会社では、会社や組織に大きな問題があるのではないかと思われてしまい、求職者や取引先からの印象も低下します。
企業イメージが下がってしまうと、新規の採用が難しくなること、取引中止が増えることなどにも繋がりかねません。
離職率を低下させるための対策
離職率を低下させるための対策について紹介します。
会社の課題を調査し、対策を講じる
離職率を低下させるためには、まず離職の原因を特定し、その原因を解消しなければなりません。
組織サーベイや従業員アンケートツールを活用し、会社のどこに課題があるのかをまず把握しましょう。
従業員のシフト希望になるべく応える
シフト制や固定の曜日・時間で勤務する業態の業界、企業では、なるべき勤務時間の希望に応えることで離職率を低下させられます。
事前にシフト希望を聞いた上で採用や配属を考慮したり、人手が足りない時間帯はアルバイトやパートに入ってもらうなど、シフト調整を行いましょう。
長時間労働を抑制する
従業員の離職理由でも労働条件の悪さは非常に多いです。
長時間労働が続くと心身に悪影響を及ぼし、生産性の低下や離職リスクの高騰に繋がります。
長時間労働を常態化させないためにも、残業時間の定点観測と必要に応じて仕事量の調整、仕事の棚卸しを行いましょう。
給与や賞与、手当を拡充する
給与は、従業員の定着や離職に大きな影響を与える項目です。
給与や賞与、手当が充実している企業では、従業員の定着意欲が高まり、業務パフォーマンスの向上が期待できます。
類似業種の企業や同じエリアの企業と比較した上で、給与額や手当を調整しましょう。
従業員の相互理解や関係構築の機会や仕組みを導入する
離職率が高い職場では、従業員同士の人間関係や職場の雰囲気が悪いことが多いです。
人間関係や職場の雰囲気が悪いとストレスが貯まりやすく、仕事の協力や連携も上手く進みません。
従業員の相互理解を深め、良い関係を構築する機会や仕組みの導入が必要です。
メンタルヘルス不調の早期対処
従業員の体調や仕事ぶりなどに異常が見られたら、早めに相談に乗る、休暇を取得して回復してもらうなど対処しましょう。
メンタルヘルスは、早期発見し、対処することによって、回復までの期間も短くなります。
管理職は特に部下の様子がおかしいと思ったら、放置せずにしかるべき処置を取りましょう。
離職対策におすすめのツール
離職対策に活用したいおすすめのツールを紹介します。
ラフ―ルサーベイ
ラフ―ルサーベイは、ウェルビーイング経営を実現するために、組織と働く個人の可視化と行動変容を促す組織改善サーベイです。
19問のショートサーベイと144問のディープサーベイ、自社独自のオリジナル設問を元に組織の状態をや自社の良し悪しをダッシュボードで表示し、その後の対策サービスをレコメンドしてくれます。
2種類のサーベイを組み合わせて活用することにより、離職の予兆を早期に検知して対処すること、会社の課題を特定して対策することの両方が行えます。
wevox
wevoxは、「従業員の心理状態や特性、組織のカルチャー等」を可視化し、エンゲージメントが高い組織づくりを支援する組織サーベイツールです。
個人のストレスやコンディションを把握し、AIがフォローのための最適な打ち手の考察を補助してくれる機能もあります。
Geppo
Geppoは、個人と組織の両方の課題を可視化するサーベイツールです。
毎月1回3問ほどの個人サーベイと四半期〜半期に1回20問ほどの組織サーベイの両方を活用することによって、個人のコンディションの変化にいち早く気付いて対処し、組織の問題点を発見することも可能です。
離職の予兆を毎日の個人サーベイから検知し、早期に対処することができます。
EX Intelligence
EX Intelligenceは、人的資本の情報開示で重要なエンゲージメントを定量的に可視化する、HRBrainが提供する組織診断サーベイです。
従業員ひとりひとりにフォーカスした分析が可能で、優先的にフォローが必要な従業員をピックアップする機能もあります。
THANKS GIFT
THANKS GIFTは、従業員同士で感謝や称賛を伝え合うサンクスカードのサービスです。
機能は、サンクスカードだけでなく、社内掲示板、社内チャット、景品交換機能、アンケートなど組織作りにおいて必要な機能が揃っています。
従業員の相互理解や良い人間関係の構築に繋がります。
TUNAG
TUNAG(ツナグ)は、エンゲージメント向上を支援する様々な機能を有するオールインワンのサービスです。
サンクスカードや社内報、SNS、社内チャットなどの他のサービスも提供しているサービスの他、組織図、ワークフロー、タスク管理などの従業員も管理者にも喜ばれる機能を提供しています。
従業員の相互理解や良い人間関係の構築に繋がります。
業界特有の課題と自社内の課題を把握し、離職率を低下させる仕組みを構築しよう
今回は、業界別の離職ランキングや離職理由と対策、おすすめのツールなどについて紹介しました。
離職対策は、その業界特有の課題と自社の課題の両方を把握した上で、施策を講じることが必要です。
組織課題を把握するツールや従業員のコンディションを定点観測するツール、従業員のエンゲージメントを向上させるツールなどを活用し、離職率を低下させる仕組みを構築しましょう。