人手不足倒産とは?発生件数の推移や原因と対策を紹介
近年では、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や都市部への人口流出、2024年問題などが原因の人手不足倒産の件数が増えています。
今後は、さらに人口減少と採用難易度向上、人件費の高騰などから人手不足倒産の件数は増えることが予想されています。
今回は、人手不足倒産の発生件数の推移や発生の原因・対策などについて紹介します。
人手不足倒産とは?
人手不足倒産とは、事業を行う上で必要な人員を確保できないことが理由で倒産してしまうことです。
物流業や医療、建設、サービス業などは、まだ機械で代替できない仕事も多く、マンパワーが必要です。
また需要が拡大している業界であれば、仕事はあったとしても、大手に人手が集中して、地方や零細企業は人の確保ができないというケースもあります。
労働力人口が減少を続けていることや、大手と中小企業で労働条件の格差が広がっていることもあり、今後もさらに人手不足倒産に陥る企業が増加することが予想されています。
人手不足倒産の種類
人手不足倒産は、大きく4つの種類に分けることができます。
1.後継者不在型
後継者不在型は、会社を継承する代表者が見つからずに倒産してしまうパターンです。
経営ができる人材が育っていない、そもそも社内に適する人材がいないなどということが理由で発生します。
2.求人難型
求人難型は、転職サイトや媒体に求人情報を出すものの、採用ができずに必要な人員が確保できずに倒産してしまうパターンです。
人手不足倒産の中では、よく発生することが多いです。
全国的に労働力人口が減少していることによって、各企業が人材募集の広告を出しており、大手や外資企業などの労働条件の良い企業に人が集まるために、人気の無い業界や企業で人手不足に陥ってしまいます。
3.従業員退職型
従業員退職型は、定年で従業員が一気に辞めてしまった場合や、会社のキーパーソンが転職などを理由に退職し、事業の継続ができなくなったパターンです。
役員や中堅社員、特定の資格を保持している従業員などの退職を理由に、その穴を埋められず、倒産に陥ってしまいます。
4.人件費高騰型
人件費高騰型は、最低賃金の引き上げや人件費を引き上げたことによって、会社の収益バランスが崩れて運転資金が無くなることで倒産してしまうパターンです。
近年、最低賃金がどんどん上がっており、従業員の人件費も採用難などの理由もあって高騰しています。
一度人件費を引き上げると、下げることは難しいため、収益バランスが崩れてしまうと倒産リスクが高まってしまいます。
人手不足倒産の発生件数
人手不足倒産の発生件数を紹介します。
帝国データバンクによる人手不足倒産の動向分析によると、人手不足倒産のここ10年の件数は、下記の数字の通りに上昇傾向にあることが分かります。
- 2014年:70件
- 2015年:65件
- 2016年:72件
- 2017年:98件
- 2018年:159件
- 2019年:192件
- 2020年:157件
- 2021年:111件
- 2022年:140件
- 2023年:260件
新型コロナウイルスの影響で経済活動が制限されていたこともあって、人手不足感は緩和されていましたが、アフターコロナになって経済活動が戻ってきた中で、急激に人手不足が進み、この10年で人手不足倒産も最高値を記録しました。
人手不足倒産が増加している原因
人手不足倒産の件数が増加している原因としては、下記のようなことが考えられます。
少子高齢化に伴う労働力人口の減少
日本国内では、少子高齢化に伴い、労働力人口がどんどん減少しています。
そもそもの絶対数が減っているため、多くの会社では従業員が減っています。
少子高齢化のトレンドは継続中であるため、今後もさらに労働力人口の減少は続いていくと予想されています。
採用難易度の上昇
労働力人口が減少していることに加えて、企業の求人数は増え続けています。
需要と供給が合っておらず、需要過多な状態が続いているため、企業が採用する上での難易度は上がり続けています。
資金が潤沢にある企業では、人件費を上げる、労働条件を良くすることで採用数を担保しており、採用できる企業と採用できない企業の二極化が進んでいます。
転職活動の一般化
現在では、転職サイトや求人情報サイトなどがすぐにアクセスできること、Web会議などでも転職活動の面談ができること、転職経験者の数が増えていることなどから、転職すること自体が一般化しています。
一昔前では、終身雇用が一般的であったため、一度入社した人材は長く勤めることが多かったですが、現代では終身雇用制度は崩壊しており、人材を長期で雇用することも難しくなっています。
人材の育成ができていない
代表や役員、有資格者やハイパフォーマーなどといった人材が仮に退職したとしても、それを穴埋めできるような人材が社内にいれば、人手不足倒産に陥る可能性は低くなります。
多くの企業では、人材の育成にあまり投資をできておらず、あらゆるリスクに備えて、後継者を育てることができていないために、人手不足倒産に陥ってしまいます。
黒字であっても人手不足倒産は発生する?
黒字の企業であったとしても人手不足倒産は発生するのでしょうか。
結論は、利益が出ていれば安心という訳ではなく、黒字であっても人手不足倒産は起こり得ます。
一番懸念すべきは、従業員の大量離職です。
従業員が大量に離職してしまって事業活動の継続が困難になってしまったり、従業員が離職することで顧客離れが起きて売上が急激に落ちてしまうことで、倒産に追い込まれてしまいます。
そのため、業績だけ良ければいいという訳ではなく、組織も同様に重視して、従業員の定着や職場環境の改善に取り組むことが必要です。
人手不足倒産を回避するための対策
人手不足倒産を回避するための対策について紹介します。
人材定着に投資し、働き続けられる環境を作る
人手不足倒産の多くが、事業を運営する上で必要な人員数を確保できなくなったことに起因します。
そのため、従業員が働き続けられるような会社にするために、定期的にアンケートを取得して課題を解消すること、従業員の関係が良好化するような組織作りに投資をすることが必要です。
ITツールを活用した業務効率化を進める
労働力人口の減少によって、今後さらに従業員の数が減る可能性があります。
ツールや機械などで代替できるような仕事は自動化や効率化させること、定期的に仕事の棚卸しを行って業務を無くすといった形で、今いる人員でも対応できるように投資と見直しを行うことが求められます。
人材教育に投資し、後継者を育成する
従業員が離職してしまったとしても、その代わりを穴埋めできるような人員を育成することも必要です。
代表者の後継ぎ候補や幹部候補・管理職候補の育成、必要な資格・スキル習得のための補助など、人員教育への投資を行いましょう。
採用競争力を向上させる
今後、人員を採用するためには採用競争力を向上させることは不可欠です。
自社が採用したい人材が多くいるであろう求人媒体の選定、採用フローの見直しなどの採用活動のやり方を変えること、自社の労働条件を見直すことの両軸で採用競争力を向上させることが求められます。
多様な働き方を導入する
業界・業種にもよりますが、フルタイムの正社員だけでなく、短時間労働やリモートワーク、業務委託などを導入することも人員を確保する選択肢の1つです。
リモートワークの導入などによって働く場所の制限がなくなったこと、雇用形態もフルタイム以外の選択肢が増えたことなどから、優秀な人材を確保するためには、フルタイム正社員のみの採用から枠を広げることを検討することも必要です。
人手不足倒産のリスクを軽減し、予防策・対策を講じることで、強い企業を作ろう
今回は、人手不足倒産の発生件数の推移や発生の原因・対策などについて紹介しました。
今後はさらに人材獲得競争が激化し、採用できる企業と採用できない企業が大きく分かれることが想定されます。
人材定着や教育に投資して人手不足倒産のリスクを軽減すること、採用競争力を向上させること、ITツールや機械を活用して業務を効率化させることなどで、長く続く企業を作っていきましょう。