eNPSとは?測定・計算方法、業界別平均スコアを紹介
従業員エンゲージメントを測定する代表的な指標の「eNPS」。
測定が容易に行えること、近年、eNPSが組織と業績の双方に良い影響を与えるという研究結果などから、ますます注目されています。
今回は、eNPSの測定や計算方法、業界別の平均、スコア向上の方法などについて紹介します。
eNPSとは?
eNPSとは、Employee Net Promoter Scoreを略した言葉で、「自分の会社をどの程度知人や友人にオススメできますか」という質問に0〜10の11段階で回答してもらうことで数値化されます。
大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが開発した、顧客ロイヤルティの指標「NPS」(Net Promoter Score)を、Apple社が従業員のエンゲージメントを数値化するための指標としてNPSを転用したことが誕生のきっかけとされています。
eNPSが高い企業ほど、従業員エンゲージメントが高いことはもちろん、収益率や成長率が高くなるとされているため、大きな注目を集めています。
eNPSの計算方法
eNPSの計算方法・算出方法は下記の通りです。
- 「自分の会社をどの程度知人や友人にオススメできますか」という質問に0〜10の11段階で回答
- 0~6点の人を批判者、7,8点の人を中立者、9,10点の人を推奨者に分類
- 推奨者の割合から批判者の割合を引き算する
例えば、批判者が50%、中立者が20%、推奨者が30%という分類だった場合、eNPSは、「30-50=-20」という結果になります。
非常に設計がシンプルで複雑な計算や分析も必要ないため、調査しやすい指標になっています。
eNPSの測定方法
eNPSは通常、組織サーベイツール、従業員アンケートツールを活用し、測定されます。
従業員にビジネスチャットや社内メール経由でアンケート回答用のURLを送付し、従業員はPCもしくはスマートフォンから回答します。
アンケート実施開始から1~2週間程度で回答を締めきって、スコアを自動で算出します。
紙での測定も可能ではありますが、アンケートの配布や回収、その後のデータの集計を考えると、非常に手間なので、従業員と管理側双方にとって専用のサーベイツールを活用することがおすすめです。
業界別のeNPSの平均スコア
国内の各業界別のeNPS平均スコアを2021年に株式会社ジャンプスタートアップパートナーズが実施したeNPSベンチマーク調査のデータを参照する形で紹介します。
製造業:-45.6
建設・不動産・運輸業:-55.1
情報通信・IT業:-54.6
卸売・小売業:-53.5
金融・保険・専門サービス業:-56.6
飲食・宿泊・観光業:-63.9
医療・福祉業:-57.4
生活サービス・娯楽業:-61.0
インフラ・教育・官公庁業:-51.0
その他:-51.6
上記の結果から、最もeNPSが低い業界は「飲食・宿泊・観光業」、最もeNPSが高い業界は「製造業」という結果になっていました。
全体の平均・中央値は開示されておりませんが、おそらく-50〜-60と推察されます。
eNPSを向上させるメリット
eNPSを向上させることによって期待できるメリットについて紹介します。
従業員の離職率低下
eNPSを向上させる取り組みの中で、組織内の課題を解消すること、良い部分を増やしていく活動を行う必要があります。
そういった改善活動の中で従業員がもっと会社にいたいと思ったり、転職するきっかけが減ることが考えられ、結果的に従業員の離職率低下が期待できます。
顧客満足度の向上
eNPSが向上し、従業員のエンゲージメントが高まると、仕事への主体性もより持てるようになってきます。
仕事への主体性がより高くなることで、顧客とのコミュニケーションを積極的に先回りして行えるようになったり、商品やプロダクトづくりもより顧客に良いものを企画・製造することに繋がります。
業績向上
eNPSが高い企業は、収益率が高いという研究結果が出ているように、業績にも良いインパクトを与えます。
従業員の生産性が向上すること、チーム内での連携やコミュニケーションが円滑になることが起因し、売上や利益率が上昇すると考えられます。
リファラル採用促進
eNPSを測定する質問が、「自分が働いている会社を知人や友人にどの程度勧められるか」という質問であるため、この質問の回答のスコアが高ければ、必然的に知人や友人に声掛けが増えることを期待できます。
エンゲージメントを高めることと求人情報や採用活動の進捗活動などの情報共有の仕組みを作ることによって、よりリファラル採用が促進されます。
eNPSのスコアやサーベイ結果を分析する方法
eNPSのスコアやサーベイ結果を分析する方法は、2つあります。
1.組織サーベイツールの自動分析機能の活用
1つ目は、組織サーベイツールの分析機能を活用する方法です。
組織サーベイツールでアンケートを締め切ると、自動で回答が集計され、スコアが表示されます。
部門やチームごとの回答結果、過去のサーベイとの比較・推移の表示などいくつかの観点でスコアを分析し、確認できます。
2.Excelやスプレッドシートでの分析
より自社が知りたい情報を知るためには、回答をエクスポートし、そのデータをExcelやスプレッドシートに取り込むことで、より細かな分析が行えます。
関数を活用したり、様々なスコアの相関関係を調べたり、スコアを相対比較するなど、自由に分析を行えます。
eNPSを高める方法
eNPSを高める方法を紹介します。
eNPSを高める方法は、企業ごとによって異なります。
どの企業でもeNPSを高めるために必要な取り組みの流れを紹介します。
1.現状把握
eNPSを向上させる上でまず必要なことは、組織サーベイツールなどのアンケートを通して、現状のeNPSの数値やeNPSが低い要因を特定することです。
eNPSを向上する上で何を対策すれば良いのかをまず明確にします。
2.目標の設定
eNPSのスコアや現状の課題感が把握できたら、今後の目標を設定します。
eNPSのスコアとeNPSと相関関係の強い要素の満足度や充実度のスコアを両方設定することがおすすめです。
3.戦略・計画策定
続いて、現状と目標との差分を埋めるための戦略や計画を策定します。
一度、やるべきことをリストアップした後に、eNPS向上へのインパクトや必要なコスト、取り組みにかかる期間などの軸を元に、スケジュールに落とし込んでいきます。
4.計画の実行
策定した戦略や計画を実行していきます。
実行する中で、気付いたポイントや今後の改善点をメモしておき、次回以降の施策に役立てます。
5.定点観測・振り返り
取り組みの成果を定期的に測定し、目標とのギャップや取り組みの達成度を元に振り返りを行います。
取り組みの成果の測定は、四半期~年度に1回は実施し、推移の変化を測定します。
また、2に戻って今後の目標を決めて計画を立てて実行することを繰り返していきます。
このサイクルを繰り返すことによって、組織の課題の早期発見と対策を行え、eNPSの向上が期待できます。
↓その他、具体的なeNPS向上の施策・取り組みを紹介した記事はこちら↓
従業員エンゲージメント向上施策20選!各メリット・注意点を紹介
eNPS向上に役立つツール・サービス
eNPS向上に活用したい、役立つツール・サービスを紹介します。
ラフ―ルサーベイ
ラフ―ルサーベイは、ウェルビーイング経営を実現するために、組織と働く個人の可視化と行動変容を促す組織改善サーベイです。
19問のショートサーベイと144問のディープサーベイ、自社独自のオリジナル設問を元に組織の状態をや自社の良し悪しをダッシュボードで表示し、その後の対策サービスをレコメンドしてくれます。
eNPSを測定すること、eNPSを向上させるためにその他の設問と分析し、課題を把握できることなどに活用できます。
Wevox
Wevoxは、上場企業の株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイです。
3分で回答が完了するアンケートをアルゴリズムが各人に最適な質問を自動配信し、分析もリアルタイムに行えます。
チーム別の比較がしやすいことや過去の推移から組織の問題を発見しやすいのが特徴です。
eNPSの測定から他の設問との分析などに活用できます。
THANKS GIFT
THANKS GIFTは、従業員同士で感謝や称賛を伝え合うサンクスカードのサービスです。
機能は、サンクスカードだけでなく、社内掲示板、社内チャット、景品交換機能、アンケートなど組織作りにおいて必要な機能が揃っています。
eNPSを測定するためのアンケート、eNPSを向上させるサンクスカードや社内掲示板など測定と施策実行の両方に活用できます。
TUNAG
TUNAG(ツナグ)は、エンゲージメント向上を支援する様々な機能を有するオールインワンのサービスです。
サンクスカードや社内報、SNS、社内チャットなどの他のサービスも提供しているサービスの他、組織図、ワークフロー、タスク管理などの従業員も管理者にも喜ばれる機能を提供しています。
エンゲージメントを向上させる上で様々な取り組みを実行する際に活用できます。
ツールを活用して、eNPSを測定・向上する仕組みを作ろう
今回は、eNPSの測定や計算方法、業界別の平均、スコア向上の方法などについて紹介しました。
eNPSを向上させることは、従業員の離職率低下や求人応募の増加、顧客満足度の向上、業績の向上など様々なメリットが期待できます。
eNPS向上には、スコアの把握と施策の実行の2つが非常に重要です。
ぜひ、eNPSを測定するツールや各施策を効果的に実施するツールを活用し、eNPSが向上する仕組みを作ってください。