アルムナイ採用とは?メリットやデメリット、企業の取り組み事例を紹介
少子高齢化や労働力人口の減少などに伴い、採用競争はますます激しくなっており、各社人員の確保に苦慮しています。
採用媒体や手法も多様化しており、最近では大企業を中心にアルムナイ採用を導入する企業が増えています。
今回は、アルムナイ採用の意味やメリット・デメリット、企業の取り組み事例などを紹介します。
アルムナイ採用とは?
アルムナイ採用とは、過去に自社で働いていたものの退職した社員をターゲットに採用する手法のことです。
アルムナイは、英語で卒業生や同窓生を意味する言葉で、日本では定年退職以外の退職者のことを指します。
これまでは、一度退職した社員を再度雇用することはあまりありませんでしたが、近年では転職活動が一般化したこともあり、一度退職した優秀な社員を再度受け入れる企業が増えています。
アルムナイ採用が注目される背景
アルムナイ採用が注目される背景を紹介します。
1.若手人材の減少
少子高齢化に伴い、若手労働者の数が減少し続けており、若手人材の獲得競争は非常に激しいです。
なんとか優秀な人材を確保するために、一度退職した人材でも再度迎え入れたいという企業が多くなっています。
2.雇用の流動化
数十年前までは新卒で入社した会社に定年まで勤めるという人が多かったですが、転職活動が一般化している現代では、中途採用を行う企業が大半であり、転職者に対する悪いイメージもありません。
優秀な人材であれば、戻ってきて活躍して欲しいと間口を広げる企業が増えています。
3.人的資本経営
人的資本経営の指針として経済産業省が作成した「伊藤レポート2.0」内に、アルムナイ人材のことを「自律的なキャリア意識を持つ人材」「目的意識が明確な人材」として記載していることから、人的資本経営の推進の一環でアルムナイ採用を導入する企業もあります。
アルムナイ採用を導入するメリット
アルムナイ採用を導入することによって下記のようなメリットがあります。
自社にマッチする人材を採用できる
一度、自社で働いていた従業員であれば、会社の文化や考え方について理解が深いこと、企業側からしても求める採用要件に合うかどうかを判断しやすいことから、ミスマッチが少ないです。
採用単価や教育費用を抑えられる
アルムナイ採用で採用できれば、転職エージェントへの成果報酬や転職媒体への広告出稿費用などもかからないため、採用費用が抑えられます。
合わせて、教育や育成に関しても工数を少なくできたり、費用を抑えることも可能です。
転職顕在層以外から採用できる
中途採用活動では、転職活動の顕在層にしかアプローチできません。
アルムナイ採用では、転職顕在層以外の潜在層の方にアプローチして採用できるため、転職活動におけるリーチできる人や層が広がります。
アルムナイ採用を導入するデメリット
アルムナイ採用を導入する際のデメリットを紹介します。
既存従業員が不利にならないようにする
一度退職した人材が新たに、資格やスキル、知識などを新しく取得している場合は、その内容を評価した上で給与を設定する必要がありますが、人事評価や給与体系が既存社員にとって不利な内容であれば、人材が流出する理由になりかねません。
アルムナイで戻ってきた従業員ばかりを優遇することが無いように気を付ける必要があります。
アルムナイ採用におけるルールを定める
退職した従業員が誰でも戻ってこれる訳ではないことや、人事評価・給与におけるルールなどを定めて、既存社員にも周知させましょう、
アルムナイで誰でも出戻り可能と思われてしまうと、退職ハードルがかなり低くなる他、アルムナイ人材を不採用にした場合にトラブルに発展する可能性があります。
アルムナイ採用に取り組む際のポイント
アルムナイ採用を自社に導入し、運用する上でのポイントを紹介します。
アルムナイと交流できる機会や環境を用意する
アルムナイ採用を行うためには、企業とアルムナイで定期的に接点を持つことが必要です。
定期的に開催するイベントやオンラインチャットグループなど、交流できる機会や環境を用意し、ただ求人情報を一方的に告知するのではなく、繋がりを持つ関係を作ることが必要です。
選考基準を明確にする
アルムナイとして、一度自社で働いたことがある人材だとしても、会社の事業や組織も多少なりとも変化しているため、今の会社に合うのか、募集している要件に当てはまるかはよく確認して採用する必要があります。
アルムナイで採用することが目的ではなく、自社が求める求人にアルムナイ人材も選択肢として幅を広げることが目的ですので、注意してください。
アルムナイ採用に取り組む企業事例
アルムナイ採用に取り組む企業の事例を紹介します。
パーソルキャリアのアルムナイ採用の取り組み事例
パーソルキャリア社では、アルムナイ人材が参加する専用サイトで繋がっている人材を対面でのオフ会に招待し、アルムナイコミュニティの交流会を開催しています。
23年4月にアルムナイのコミュニティを発足し、1,000名が登録、約30名ほどがパーソルキャリア社に復帰しています。
専用サイトでは、採用情報以外に副業募集や再入社社員のインタビューを発信する他、アルムナイメンバー同士でメッセージ交換もできます。
三菱重工業のアルムナイ採用の取り組み事例
三菱重工業社では、23年10月に「採用直結型」のアルムナイ採用を導入しました。
専用のサイトに登録すると、求人情報の閲覧やコーディネーターへの相談が行えます。
アルムナイ採用の導入開始から半年で数百名が登録し、数名に内定を出すなど、既に採用にも繋がっています。
MIXIのアルムナイ採用の取り組み事例
MIXI社は、退職者と繋がり続ける場を創出するためのアルムナイ専用サイトを開設しています。
2022年以降で12名(2024年6月時点)が一度会社を退職した後に、アルムナイ採用で出戻りでの職場復帰を実現させています。
アルムナイ採用で戻って来て、成果を出すことによって部長職に就いている方もいます。
アルムナイ採用を導入し、自社が求める人材を採用できる確率を高めましょう
今回は、アルムナイ採用の意味やメリット・デメリット、企業の取り組み事例などを紹介しました。
アルムナイ採用は、アルムナイネットワークの構築や定期的なイベントの開催など、工数もかかりますが、採用に繋げられると採用コストを低く抑えられつつ、ミスマッチが少ない採用手法です。
ぜひ、アルムナイ採用を導入し、自社が求める人材を採用できる確率を高めてください。