アルムナイとは?制度の内容、採用のメリット・デメリットを紹介
優秀な人材の退職は企業にとって痛手です。
従業員としても介護や配偶者の転勤、自身のライフイベントのためなど、その会社で働き続けたいにも関わらず退職を余儀なくされるケースも少なくありません。
そういった一度退職した優秀な人材を再度迎え入れるのがアルムナイ採用です。
今回は、アルムナイ採用の制度の内容やメリット・デメリット、注意点などについて紹介します。
アルムナイとは?
アルムナイとは、「卒業生」「同窓生」を意味する言葉で、人事領域では、「定年退職者を除く企業を離職・退職した人の集まり」を指します。
欧米企業では、退職した優秀な従業員と連絡を取り続け、再雇用するアルムナイ採用が一般的に行われています。
日本企業でも、転職することが一般化していることから、アルムナイ採用に力を入れる企業が増えています。
アルムナイ制度が注目される理由
アルムナイ制度が注目される理由や背景を紹介します。
雇用の流動化
日本では数十年前までは、1つの企業に入って定年を迎えるまで働き続けることが一般的でしたが、最近では日本企業も転職活動を行うことが一般的になっています。
終身雇用が当たり前の時代はアルムナイ採用などはそもそも日本ではありませんでしたが、一度入社した従業員が退職することが一般的であるため、アルムナイ制度の重要性が年々高まっています。
採用難易度の上昇
近年では労働力人口が減少を続ける一方で、企業の人材募集はそれに比例して減ることはなく、求人倍率もどんどん上昇しています。
外資系の企業やベンチャー企業は報酬水準が高いこともあり、人気企業に応募が集まり、それ以外の企業は採用難易度が向上しているのが実情です。
採用チャネルの1つとして退職した人を突き放すのではなく、また出戻りで戻ってこれるような環境を整えることで、優秀な人を採用することを目的としています。
採用ミスマッチ減少
アルムナイの人は、会社の内部事情や社風、中で働く従業員のことを知っており、カルチャーミスマッチが発生する可能性が低いこと、そして仕事でのスキルや能力が分かるため、募集する職種の要件を満たす可能性が高いなど、採用ミスマッチが起こる可能性が低いこともアルムナイ採用が注目される要因の1つです。
アルムナイ制度を導入するメリット
アルムナイ制度を導入することによって期待できるメリットを紹介します。
即戦力人材の確保
一度社内で働いていた人材であれば、その従業員の仕事ぶりやスキルなどは会社が把握できているため、期待する成果をすぐに発揮してくれる可能性が高いです。
教育期間が短くて済むことや社内での人間関係の構築も比較的スムーズにいくため、その分仕事を進めやすくなります。
採用・教育コストの低減
アルムナイ採用自体には、採用広告費用は発生せず、他の採用チャネルと比較すると採用コストがあまり発生しない採用手法です。
また、最初に入社した際に教育を行っていれば、重複する教育内容などは削減でき、教育にかかるコストも低減できます。
企業イメージの向上
アルムナイ採用は、一度退職した従業員を再度向かい入れる採用活動です。
会社としてアルムナイ採用に力を入れて、実績が増えれば、周囲からは一度退職してもまた入社したくなるくらい良い会社という見られ方をされます。
また、一度外に出ることで新たな知見を社内に取り入れることができ、会社としてよい知見が蓄積されます。
アルムナイ制度導入のデメリット
アルムナイ制度を導入することによって考えられるデメリットを紹介します。
既存の従業員にマイナスの影響が発生する可能性がある
企業側が優秀だと思っていた退職者でも、従業員との人間関係に問題があったり、本人の力量を過大評価されていたケースであれば、アルムナイ入社後に既存の従業員のモチベーション低下を招く可能性があります。
特に人間関係が良くなった場合は、職場の雰囲気が悪くなってチームの生産性が下がってしまう可能性があり、個人の仕事の能力だけでなく、チーム全体でのパフォーマンスが向上するかを考えて採用する必要があります。
退職者との関係維持のための工数やコストが発生する
アルムナイ採用では、退職者と定期的に接点を持ち続けるために定期的にイベントを開催したり、お知らせを配信したりと関係維持のための工数やコストが発生します。
アルムナイ採用をしたい時だけに力を入れればよいという訳ではなく、接点を持ち続けることが必要なため、求人の募集をしていない時であっても工数やコストは変わらず発生します。
アルムナイ制度を導入する際のポイント・注意点
アルムナイ制度を導入する際のポイントや注意点を紹介します。
復職できる条件の明確化
アルムナイ制度は、退職した人を誰でも戻って来て良いとする制度ではなく、会社にとって必要な人材でそれに合致する人材を退職者からでも歓迎するという制度です。
そのため、勤務当時にパフォーマンスが低かった人や問題を起こした人などは、アルムナイ採用の対象にはなり得ないため、復職できる条件を予め決めておくとよいです。
アルムナイ制度の目的や内容の周知
アルムナイ制度は、まだ日本でも一般的という訳ではなく、従業員の中には制度の内容について知らないために抵抗を示す人もいるかもしれません。
アルムナイ制度を導入することによる目的や会社へのメリット、具体的な内容について従業員に説明し、アルムナイ採用で受け入れる場合には歓迎できる雰囲気を醸成することも必要です。
従業員が戻ってきたいと思える組織作り
アルムナイ制度は、制度があったとしても、退職者がまた戻りたいと思えるような会社でなければ成功しません。
従業員エンゲージメントを高め、組織の問題点を解消し、従業員が退職したとしてもまたいつか戻ってここで仕事がしたいと思ってもらえるように組織作りに力を入れましょう。
退職者と関係を維持する方法の検討
アルムナイ制度では、退職者と関係を持ち続ける取り組みですので、どのような方法で退職者と関係を持ち続けるかは決めておくとよいです。
定期的にメールなどで情報を発信する、定期的に退職者を集めたイベントを開催する、チャットコミュニティなどを作り、その中で退職者同士も関係構築できるようにするなど、方法は様々ですので、自社に合った方法で運用を行ってください。
アルムナイ制度導入企業の成功事例
アルムナイ制度を導入することによって、良い影響があった企業の成功事例を紹介します。
株式会社良品計画のアルムナイ採用事例
株式会社良品計画では、一度退職した優秀な人材に戻ってきてほしいということでカムバック制度というアルムナイ採用を行っています。
介護や配偶者の転勤などの止むを得ない理由で退職する本社員に再雇用を約束するバックパスを発行する制度と良品計画を一度退職した方を職制ごとに募集する再雇用制度の2つを運用しています。
情報参照元:カムバック採用 | 採用情報 | 良品計画
TIS株式会社のアルムナイ採用事例
TIS株式会社では、多様性を重んじるフェアなカルチャーを大切にしており、一度退職したアルムナイの人を再雇用を行っています。
アルムナイ同士やアルムナイとさまざまな企業の交流を促す、独自のアルムナイネットワークも構築しており、アルムナイの現職の確認やコミュニケーションを気軽に取れるようになっています。
情報参照元:アルムナイ・ネットワーク | 採用情報 | TISキャリア採用サイト
双日株式会社のアルムナイ採用事例
双日株式会社では、2021年に双日アルムナイを構築し、退職者との接点を確保しています。
双日を退職して外部で活躍する方々と、現役の双日役職員との交流を促進するための専用のSNSやオンライン/オフラインのイベントを開催することで、交流機会を創出しています。
アルムナイの採用だけを目的とせず、アルムナイと接点を持ち続けることの効果を得るための取り組みを行っていることが特徴です。
情報参照元:双日アルムナイ|挑戦を「促す」仕組み|人材戦略|経営戦略|企業情報|双日株式会社
アルムナイ採用を活用し、優秀な人材が定着・集まる環境を整えよう
今回は、アルムナイ採用の制度の内容やメリット・デメリット、注意点などについて紹介しました。
優秀な人材で事情があって退職してしまってもまた戻ってこられる制度があることは、会社のことが好きな従業員には喜ばしいことで、会社にとっても優秀な人が戻ってくることはメリットが大きいです。
アルムナイ採用は、既存の従業員に目的を理解してもらい、制度の内容を明確にすることで、デメリットを軽減し、メリットが最大化されます。
ぜひ、アルムナイ採用を活用し、優秀な人材が定着、集まる環境を作ってはいかがでしょうか。