目標管理(MBO)とは?目的やメリット、運用方法を紹介
人事評価が評価者によってバラつきがある、管理職が目標に対する進捗を確認できていない、従業員が目標達成意識が低い、こういった評価や目標管理に課題を持っている企業は少なくないと思います。
2022年3~4月にカオナビ社が行った目標管理に関する調査では、半分以上の企業が何らかの目標管理制度を導入しており、その中でも約7割程がMBO制度を導入しています。
今回は、目標管理(MBO)の目的やメリット、運用方法などについて紹介します。
目標管理(MBO)とは?
目標管理とは、従業員自身に目標を設定してもらい、達成するために進捗を自分自身で管理することです。
目標管理(MBO)は、「Management by Objectives(目標による管理)」の略称で、アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが提唱した人材マネジメントの概念です。
与えられた目標であれば、どうしても受け身になってしまい、モチベーションが低下しがちですが、自分で目標を設定することによって、従業員の成長や主体性の向上が期待できます。
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目標管理ツールの主な機能や比較ポイント、おすすめツールを紹介
目標管理(MBO)と(OKR)の違い
目標管理(MBO)と似た意味の言葉でOKRがあります。
それぞれの違いについて紹介します。
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称で、1つの定性的な目標と2~5つ程度の目標を達成するために重要な指標を設定し、従業員が会社において重要な目標達成を目指す目標設定・管理方法です。
具体的には、下記の図のような違いがあります。
MBO | OKR | |
名称 | Management by Objectives | Objectives and Key Results |
目的 | 従業員の人事評価
目標達成意欲の向上 |
従業員の人事評価
チャレンジャー精神の醸成 |
特徴 | ・自分で目標を設定
・進捗を自分で管理 ・現実的 |
・従業員の目標と会社の関連性が分かる
・未来志向 |
共有範囲 | 被評価者と評価者 | 全社員 |
評価・レビューの頻度 | 半期~1年に1度 | 月次~四半期に1度 |
目標の達成率 | 100% | 60~70% |
目標管理(MBO)の目的
目標管理の目的としては、大きく3つあります。
目標達成への意欲やモチベーション向上
目標管理(MBO)では、従業員自身が目標を設定します。
自分で目標を設定することで、納得度が非常に高く、与えられた目標と比べて目標達成への意欲やモチベーションが高くなることが期待されます。
従業員の成長促進
目標管理(MBO)では、従業員が自身で目標を設定から管理までを行います。
目標設定自体も過去の実績や市況、お客様の状況などを鑑みて論理的に社内で説明できるように設定する必要がある他、自身の目標と進捗の把握、ギャップを埋めるための行動や思考を行う必要があり、従業員の成長を促進します。
透明性高く、公平な人事評価
目標管理では、従業員が立てた目標と実績が具体的な数値として表れます。
人事評価も目標管理の定量的な結果を元に行うため、評価者の好みや偏りに左右されることなく、透明性が高くかつ公平な評価を行えます。
目標管理(MBO)を行うメリット
目標管理を行うメリットとしては、下記のようなものがあります。
従業員の生産性向上
目標管理を導入することによって、自分で設定した目標達成に向けて行動します。
目標設定を行う中で、自分が行いたい活動をイメージしたり、目標達成のイメージが持ちやすいことから、行動に移しやすく、従業員の生産性の向上が期待できます。
人事評価業務の簡易化
目標管理制度では、目標と実績のギャップが明確に数字として表れます。
また、目標設定や進捗管理などのプロセスにおいても、レベル感や計画とのキャップが測りやすいため、人事評価を行いやすくなります。
人事評価への納得度向上
目標管理では、そもそも自分で目標を設定するため、目標設定に対しての納得度が非常に高い他、目標と実績のギャップが明確に数字として表れるため、人事評価への納得度がたかくなります。
自己管理能力の向上
目標達成のために、自分のスケジュールやタスクを随時見直しながら行動を行うことによって、タスクやスケジュール管理能力が高まる他、計画を立てて実行して振り返り、改善するPDCAの一連の流れが自然と行われるので、自己管理能力が高まることが期待できます。
目標管理(MBO)を行うことのデメリット
目標管理を行うことのデメリットとしては、下記のようなものが考えられます。
中長期的な視点での目標が設定されない
目標管理で設定される目標は、基本的に通期など短い期間を対象とした目標が設定されます。
また、従業員自身が目標を設定するため、今の延長線上の目標しか設定されません。
そのため、中長期的に伸ばすべき領域よりも短期の目標が設定されてしまったり、従業員の中長期的に伸ばしてほしいスキルの成長を促進することに向きません。
評価者のマネジメントの負荷増加
目標管理は、基本的に目標設定から管理を従業員に任せる制度ではありますが、目標の妥当性や進捗管理などは上司もサポートやフィードバックを行う必要があります。
目標設定のレクチャーから、進捗が芳しくない場合は進捗管理から能力支援などマネジメント工数が上がる場合もあります。
場合によっては生産性低下や成長を阻害
従業員が設定する目標の難易度が低い場合、会社にとってさらに業績を伸ばす余地があるにも関わらず、期待以上の実績が出なかったり、目標の難易度が低いのでスキルを成長させようという意識が低くなってしまって、逆に成長を妨げてしまう可能性もあります。
目標管理制度(MBO)の運用方法
目標管理制度は、5つのステップを繰り返すことによって運用されます。
それぞれのステップで行うことを紹介します。
1.目標設定
まずは従業員自身に目標を設定してもらいます。
この際に、従業員が立てた目標はそれで決定するのではなく、上司が必ず確認を行います。
目標の内容や難易度、他のメンバーの目標などと照らし合わせてフィードバックを行った上で、目標を決定します。
2.目標達成のための計画策定
目標を決めた後は、目標達成のための計画を策定します。
目標達成の期日から逆算して、週〜月での粒度でKPIの目標や行動予定などを細かく立てて、進捗を振り返られるようにします。
3.計画の実行
目標と計画が定まったら、計画を遂行していきます。
この際に具体的な行動に移せるように、行動予定を具体的に計画に盛り込んでおくことが重要です。
4.進捗の確認・改善
目標や計画の進捗を週次や月次で確認を行います。
目標から進捗が大幅に遅れている場合は、進捗確認の頻度を週次にする、あまり問題がなさそうであれば月次にするといった形で、ビハインドしている場合はとにかく行動と改善を重ねてペースアップを図ることが重要です。
目標より上振れて進捗している場合も、より高い実績を残せるように改善の余地について考えることが従業員の成長に繋がります。
5.評価・振り返り
評価期間が終わった後は、実績や目標達成に至るまでのプロセスについて振り返りとフィードバックを行います。
目標設定から計画の立て方、振り返りやその後の改善活動など結果だけではなくプロセスも含めて、次年度はどうしたらさらに良くなるのかを話し合います。
その振り返りを次年度の目標管理に活かし、この1から5の流れを繰り返します。
目標管理制度(MBO)における注意点
目標管理制度は、運用の仕方によっては、従業員のモチベーション低下や成長の阻害、業績への悪い影響などが発生する場合があります。
目標管理制度を開始、運用する上での注意点を紹介します。
組織目標と連動した個人目標を設定する
目標管理制度において、従業員自身に目標を立ててもらう際に起こりがちなのが、個人目標と組織目標が連動していないということです。
組織全体では、利益の確保を優先しているにも関わらず、個人では利益よりも売上高を目標に設定してしまうと、会社の方針とギャップが生まれてしまいます。
個人と組織の目標の連動性に関しては、上司が確認しましょう。
難易度や周囲の水準に合わせた目標を設定する
従業員が立てた目標は、それで確定するのではなく、
目標の内容や難易度、周囲の水準と照らし合わせて、従業員への期待値を伝えるなどして、フィードバックを行うことが重要です。
目標が簡単過ぎて従業員の成長を妨げたり、目標が高すぎて途中でモチベーションが下がってしまうといったことを防げるよう、
上司が目標設定や進捗管理のフォローを行う
目標の設定や進捗管理も部下のレベルや目標の達成度に合わせて、上司がフォローを行いましょう。
途中途中で活動や方針を見直して改善することによって、進捗の遅れを取り戻したり、より良いパフォーマンスを出すことが期待できます。
必ず振り返りの時間を設ける
目標管理制度において、非常に重要なものの1つが振り返りです。
目標設定から進捗管理、改善活動など全てにおいて、次年度はより良い活動ができるよう、反省点や改善点を見直します。
上司からの評価伝達と合わせて、目標管理の一連の取り組みを振り返り、次年度に活かしましょう。
目標設定におけるフレームワーク
目標設定においては、いくつかフレームワークがあります。
そのフレームワークに合わせて目標設定を行うことがオススメです。
目標設定のフレームワーク3つをそれぞれ紹介します。
SMARTの法則
SMARTの法則は、経営学者ピーター・ドラッガーが提唱し、目標設定においては非常に有名な法則です。
- Specific:具体的
- Measurable:測定可能
- Achievable:達成可能
- Relevant:関連
- Time-bound:期限が明確
上記の5つの頭文字を取って、SMARTの法則と呼ばれます。
ランクアップ法
ランクアップ法は、下記6つの要素から目標項目を設定する方法です。
- 改善:現状の課題・弱点を改善する
- 代行:先輩や上司の仕事を代行できるようにする
- 研究:特定のテーマについて研究する
- 多能化:新しい能力・スキルを身につける
- ノウハウの普及:自分のスキルや知識をノウハウにまとめる
- プロ化:スキルやノウハウをプロレベルまで引き上げる
HARDゴール
HARDゴールは、下記4つの項目に沿って目標を設定する方法です。
こちらも4つの頭文字を取って設定されています。
- Heartfelt:心から達成したいと思う
- Animated:目標達成後の様子が思い浮かべられる
- Required:目標達成のために必要なスキルや能力を明確にできる
- Difficult:困難かつやりがいを感じられる
目標設定を行う際のポイント
目標設定のフレームワークと合わせて、実際に目標設定を行う際のポイントについて紹介します。
期限と数値を盛り込んだ目標を設定する
目標設定のフレームワークで紹介した「SMARTの法則」に入っている、目標の定量化と期限の設定は、具体的な行動に落とし込んだり、進捗度合い・達成度合いを測定するためには欠かせません。
いつまでに何をどの程度やるというのは必ず目標に盛り込みましょう。
従業員の自主性を尊重する
目標管理制度の肝は、従業員自身で目標を設定してもらうことです。
上司からのフィードバックは必要ですが、あくまでも従業員の自主性を尊重し、目標管理制度のメリットを享受できるようにしましょう。
ストレッチ目標を設定する
目標設定を行う際に、ストレッチ目標を設定することによって、より高い目標を達成したいという動機が働き、従業員の成長を促進する他、良い結果を生むことが期待できます。
通常の目標と合わせて、達成可能な範囲でストレッチした目標を設定しましょう。
目標管理シートに記載する項目
目標管理シートを作成して管理する上で、記載すべき項目を紹介します。
- 目標
- ストレッチ目標
- 期日・期間
- 目標達成に向けた具体的なアクション
- 評価基準
- 結果
- 達成率
- 上司からの評価
上記8項目は、目標管理シートに欠かせない内容ですので、記載します。
この目標管理シートを元に、期日終了後に評価・査定を行います。
目標管理ツールとは?
目標管理ツールとは、目標管理の業務を円滑に進めるために活用されるツールです。
目標管理をExcelなどで運用している企業もあるかもしれませんが、ツールに統合することによって、進捗状況が見えやすく、マネジメントをする側にとって非常に管理工数が軽減されます。
目標管理は、従業員が主体的に自己管理をする方法ですが、進捗をブラックボックス化してしまうと、気付けば目標から大きくビハインドしていたり、そもそも進捗を確認していなかったりという問題が発生する可能性があります。
そういった問題は、専用のツールを活用することによって発生を防ぐことができます。
目標管理ツールの主な機能
目標管理ツールの主な機能について紹介します。
- 目標と進捗状況の可視化:目標に対する進捗度合いを表示
- アクション予定:今後取り組む予定を表示
- アクション記録:過去取り組んだアクションを表示
- コメント・フィードバック:上司・同僚からのコメントを表示
- 共有・公開:進捗度合いをチームや会社全体などに公開、共有可能
- 面談・1on1記録:定期的な面談・1on1の議事録を登録
目標管理ツールを活用するメリット
目標管理ツールを活用するメリットを紹介します。
目標の進捗度合いが一目で分かる
目標管理ツールを活用し、従業員が日々アクションや実績を更新することによって、一目で目標に対する進捗を確認できます。
共有権限を付与することでチーム、部内の他のメンバーの進捗もすぐに確認でき、現在チームがどういった状況なのかを管理職だけでなくメンバーもグラフィカルに理解できます。
目標管理に関するマネジメント業務が効率化される
進捗の最終更新日や今後のアクションを登録できるため、管理職が1人1人に進捗はどうなっているのかを聞いて回ったり、進捗を更新したかどうかを確認する必要がなくなります。
進捗管理の様々な業務が大幅に効率化できるため、管理職にとっては非常に有用なツールです。
人事評価の仕組みも合わせて構築できる
目標の進捗や結果は、人事評価に密接に関係する内容です。
目標管理ツール上で評価項目に対する結果や評価を入力できるため、そのデータを人事評価に連携させることで、人事評価の業務が効率化されます。
タレントマネジメントツールと連携している目標管理ツールもあり、自動的にデータが転送されるものもあるため、様々なツールやデータを引っ張って集計するといった業務が軽減できます。
↓目標管理ツールの機能や比較ポイント、主なツールを紹介した記事はこちら↓
目標管理ツールの主な機能や比較ポイント、おすすめツールを紹介
目標管理ツールを活用し、従業員の目標が達成される仕組みを作ろう
今回は、目標管理(MBO)の目的やメリット、運用方法などについて紹介しました。
目標管理ツールは、従業員の目標管理を支援するとともに、目標達成の可能性を向上させるツールです。
目標管理の制度を導入するとともに、専用のツールを活用することによって、運用を効率化させてください。
まずはサービス紹介資料をダウンロードいただき、自社で活用できそうか検討してみてはいかがでしょうか。