集団浅慮とは?事例や原因、発生しやすい条件と対策まとめ
仕事や何かのプロジェクトを進めるにあたって、優秀な人材が多いほど、優れたアイディアや決断が出せそうというイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際はそうでない場合があります。
必ずしも思ったことを発言できない、外部の意見を聞かなくなるなどの「集団浅慮」によって、不合理な結論を出してしまいます。
今回は、集団浅慮の事例や原因、発生しやすい条件と対策などについて紹介します。
集団浅慮(グループシンク)とは?
集団浅慮(グループ・シンク)とは、1人1人が優秀であっても、集団になると判断能力が損なわれ、かえって不合理な結論を導いてしまうことです。
集団浅慮(グループ・シンク)は、アメリカの社会心理学者のアーヴィング・ジャニスによって提唱されました。
集団凝縮性(集団に対する帰属意識)が高い組織ほど、閉鎖性が強くなったり、同調圧力が強くなるなどで、この集団浅慮が発生しやすいとされています。
集団浅慮(グループシンク)に陥った組織の事例
集団浅慮に陥った組織の具体的な事例を紹介します。
ピッグス湾事件
ピッグス湾事件は、1961年4月アメリカ大統領J.F.ケネディが、キューバのカストロ政権の転覆を目的にキューバのピッグス湾侵攻を行った事件です。
この侵攻は、アメリカの前大統領のアイゼンハワーがCIAと秘密裏に計画を進めており、優秀なメンバーが集まっており、キューバから亡命した反革命傭兵わずか2000人に強く依存しており、航空支援や補給体制の面から反対意見や様々な提案・意見が出ていました。
しかし、J.F.ケネディが出席する会議では、情報遮断や内部の圧力などから肯定的な意見ばかりがでて、侵攻を決断します。
その結果、航空支援や補給体制が機能せず、バックアップの計画も立てていなかったため、失敗に終わりました。
NASAの「チャレンジャー号」の爆発事故
1986年1月に、NASAはスペースシャトル「チャレンジャー号」を打ち上げるも、打ち上げ後すぐに空中分解し、乗組員7人が亡くなっています。
このスペースシャトル「チャレンジャー号」では、何度もトラブルが発生しており、打ち上げが延期になった場合は、予算の縮小や計画の見直しが計画されていました。
当日は、低気温や悪天候、部品の欠陥などから現場の技術者は打ち上げ延期を求めていたものの、NASAの管理者は打ち上げを決行し、結果的に上述の事故が発生しています。
集団浅慮(グループシンク)が起こりやすい条件
集団浅慮は、下記3つの条件が揃った際に、発生しやすいとされています。
1.組織の凝集性が高い
組織の凝集性が高い状態とは、集団への帰属意識、団結力、結束力が高い状態を言います。
集団の団結力が強い方が強いチームのように思えますが、デメリットも存在します。
2.組織に構造的な欠陥がある
具体的には、新たな視点や意見が排除される、不公正なリーダーシップ(全員の発言が平等に与えられない等)、方法手続きの規範の欠如、メンバーに多様性が無いなどが該当します。
3.誘発的な状況にさらされている
外部から強いストレスを受けている、最近の失敗・意思決定の難易度が高い・モラル上にジレンマがあるなどの一次的な自尊心の低下が発生している状態のことを指します。
集団浅慮(グループシンク)が発生する集団の兆候
集団浅慮が発生しやすい集団には、下記のような兆候が見られます。
- 代替案を精査しない
- 外部の情報や意見を除外・無視する
- 採用しようとしている案のリスクを検証しない
- 沈黙や意見を発しないことを賛同とみなす
- 初期に検討して退けた案を再検討しない
- 比較検討を行わない
- 非常事態の際の計画を策定しない
- 失敗の責任を他に転嫁する
- リーダーの権力が強すぎる
- 新しい人が入るのを拒む
集団浅慮(グループシンク)を防ぐための対策・ポイント
集団浅慮を防ぐための対策やそのポイントについて紹介します。
リーダーが公正なリーダーシップを取る
最初のリーダーの意見に賛同して議論ができない状態を避けるためにも、リーダーは聞き役に徹したり、中立な立場で他のメンバーの意見を聞くようにするなど、幅広く意見を出してもらった上で議論を行うことが必要です。
意見をしやすい環境を整える
他人が出した意見について、否定や批判を行うことなく、様々な意見を尊重することを1人1人が意識することが必要です。
議論は、様々な観点で意見を出し合って議論を行うものであると参加者が理解する必要があります。
外部の意見を取り込む
外部との接触がなく閉鎖的な集団は、集団浅慮に陥りやすいです。
外部からの専門家や利害関係の無い人の意見を取り入れたり、あえて反対意見を述べる役の人を設けたりと、異なる価値観の意見を取り入れた上で検討することが必要です。
充分に比較検討を行う
何かしらを選択する際に、要件を固めて、複数の案を元に比較検討を行うこともポイントです。
最初から特定の案の是非を問うのではなく、要件に合致する複数の案やそれ以外の案も含めて様々な意見やアイディアを出してもらうことが必要です。
心理的安全性を確保し、集団浅慮を防ぐための環境を整備しよう
今回は、集団浅慮の事例や原因、発生しやすい条件と対策などについて紹介しました。
どの集団であっても、集団浅慮は発生する可能性があり、特に自分たちは優秀だと思い込んでいる組織ほど、この問題が発生する可能性は高いです。
ぜひ、集団浅慮を未然に防ぐような組織・環境を整えて、失敗のリスクを低減するような組織を作ってください。