人材育成とは?課題や目標・計画の立て方、企業事例を紹介
会社の普段の業務を遂行し、売上や利益を創出するとともに、様々なチャレンジを行って変化に対応したり、他社との競合差別性を生み出す源泉になるのが、人材です。
人材育成を行うことによって、業務の生産性を上げるだけでなく、将来の管理職候補を育成したり、将来的に必要であろうスキルや知識を蓄え、変化に対応する力を養うことができます。
今回は、人材育成における課題や目標・計画の立て方、企業事例などを紹介します。
人材育成とは?
人材育成とは、経営目標の達成や業績向上を目的に、従業員に知識やスキルの習得を促すことです。
あくまでも従業員の能力開発や資格取得がゴールではなく、その知識やスキルを業績向上に繋げることが目的です。
人材育成には様々な手法があり、従業員の特性に合わせて計画的な育成を行うことが理想です。
人材育成が重要である理由
企業において人材育成が重要である理由を紹介します。
業務の生産性を向上させるため
人材育成を通じて、業務で活用できるスキルや知識が増えると、これまで行っていた業務をより早く実行できたり、もっとよい施策を講じることができたりと業務に良い効果をもたらします。
特に今の日本では、労働力人口が減少を続けているため、1人1人の生産性を上げていかなければ、会社の業績は下がってしまいます。
会社の将来的な中核メンバーを育てるため
戦略的に人材育成を行うことで、会社の将来的な中核メンバーやリーダーを育てていくことにも繋がります。
管理職やトップパフォーマーは計画的に育成を行わなければ、なかなか必要な知識やスキルを身に付けたり、必要な経験を積むことは難しいです。
若手からも将来を見据えて、リーダー・管理職候補を育てていくことが企業存続・成長のためには重要です。
技術革新に対応するため
AIやロボット、ビジネスモデルの変化など、常に会社を取り巻く環境は変わり続けています。
将来的に必要であろう知識やスキルを身に付けるリスキリングを怠れば、企業は変化に対応する力を失ってしまい、業績が悪化するリスクがあります。
技術革新に対応できる従業員を育成することも重要です。
人材育成における目標の立て方
企業として人材育成に取り組む際の目標の立て方のポイントを紹介します。
具体的な数値で設定する
人材育成で目標を設定する際には、具体的な数値で進捗の確認や達成未達の判断ができるように設定します。
具体的な数値でなければ、現状と目標の差分が分からず、そのため適切な打ち手も打てません。
人材育成の進捗を数値でも判別できるような内容で設定しましょう。
会社の経営方針や事業戦略とリンクさせる
人材育成は、業績向上や経営目標の達成のために行われるものです。
会社の経営方針や将来的なリスクなどから何に取り組むのかを設定します。
デジタル人材の人数、幹部候補の従業員の人数、特定の資格保持者の人数など、具体的な内容を設定することがポイントです。
期限を設定する
目標をいつまでに達成するのかの期限を設定します。
期限から逆算して計画を立てる必要があるため、達成が実現可能な範囲で期限を設定します。
人材育成における企業の目標例
上記の人材育成における目標の立て方の3つのポイントを踏まえると、人材育成の目標例としては下記のようなものが挙げられます。
- 2030年までにデジタル人材を100名育成する
- 2025年までにリスキリング講座受講率を70%まで引き上げる
- 2030年までに次世代の経営やマネジメントを担う幹部候補生を30人以上育成する
- 来年までに○○の資格取得者を10人まで増やす
人材育成における主な課題
(独)労働政策研究・研修機構が2018年に公表した「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査票)」をを厚生労働省労働政策担当参事官室が独自集計した資料を元に人材育成における主な課題を紹介します。
人材育成における課題をランキング順にすると上位5つは下記のようになっています。
- 1位:従業員の業務が多忙で、人材育成に充てる時間を確保できない
- 2位:上長等の育成能力や指導意識が不足している
- 3位:従業員が能力開発に取り組むため不在にしても、その間、他の人が業務を代替できる体制が構築できていない
- 4位:人材育成を受ける従業員側の意欲が低い
- 5位:社内で人材育成を積極的に行う雰囲気がない
人材育成の具体的な手法
2022年8月商工中金景況調査での「中小企業の人材育成の状況について」によると、企業における人材育成の取り組みで実施されている手法の上位は、下記のようになっています。
- 1位:OJT
- 2位:社内研修
- 3位:金銭的支援
- 4位・外部講習
- 5位:ITスキル
- 6位:勤務制度の整備
- 7位:公的支援
- 8位:研修施設・設備
- 9位:OJT
- 10位:出向兼業副業
人材育成計画の策定方法・流れ
人材育成計画を策定する際の方法や流れを紹介します。
現在の課題や状況の整理
人材育成の取り組みを始める際に、まず行うべきことは現時点での自社の育成における課題や現状の分析です。
誰がどのようなスキルを持っているのか、各階層ごとに見た場合の課題はなんなのかなど、情報を整理します。
人材育成におけるゴールや方向性の策定
次に、会社として人材育成を通して従業員のスキルや知識をどのレベル感まで引き上げていくのか、どのようなスキルを向上させたいのかなどのゴールや方向性を決めていきます。
人材育成の方向性は、経営戦略に沿ったものが必要ですので、経営戦略を達成させるために、どういったスキルや知識、資格が必要なのかを整理します。
人材育成の目標策定
人材育成におけるゴールや方向性が定まったら、人材育成の目標を設定します。
「誰の」「何を」「いつまでに」「どの程度」まで向上させるのかを、最終的なゴールと途中の目標を段階的に策定します。
目標を達成するための計画を策定
人材育成における目標が定まれば、その目標を達成するための取り組み内容や予算などの計画を立てます。
年度ごとに予算の上限が決まっている場合は、取り組みの中でも優先順位を付けて、計画を作ります。
計画に基づいた取り組みの実行
人材育成計画が固まったら、計画に基づいた取り組みを実行します。
人材育成計画を計画通りに進めるためには、従業員に人材育成の目的や内容について事前に周知し、理解をしてもらった上で取り組みを進めることがおすすめです。
定期的な振り返り・評価・見直し
人材育成計画の取り組みを進める中で、年度に1回や中期計画の期末のタイミングなどで定期的に人材育成の取り組みやその成果について振り返り、評価を行います。
人材育成のゴールに対する進捗度や期待する成果とのギャップなどから必要に応じて人材育成計画の内容を見直し、再策定します。
日本企業における人材育成の事例
日本企業における人材育成の取り組み事例を紹介します。
三井物産の人材育成の取り組み事例
三井物産では、最も重要な資産は「人材」と捉え、社会に貢献できる人材の育成を使命と考えて人材育成に取り組んでいます。
各種スキル習得のための研修、新入社員・リーダー・管理職など階層向けの研修、海外研修など人材育成プログラムを幅広く提供しており、その上で人材配置・人事評価などにも力を入れています。
野村総合研究所の人材育成の取り組み事例
野村総合研究所では、高度な専門性を持つこと、そして自ら設定した目標のもとに自立して働き、変革を恐れず果敢に挑戦することを社員に求め、そのような人材を育成するために、(1) OJT(On the Job Training)、(2)研修、(3)自己研鑽の3つを好循環させながら、人材育成に取り組んでいます。
また、社員が自ら研鑽に励む風土を醸成するために、全社横断的に「人材育成、グローバル、女性活躍推進、事業創造」をテーマに議論し交流を深める活動を継続的に行っています。
ANAホールディングスの人材育成の取り組み事例
ANAホールディングスでは、人財こそが最大の資産であり、差別化の源泉と捉えており、グループ行動指針『ANA’s Way』を正確に理解し、行動できる人財の育成を行っています。
階層ごとの集合研修、選抜型研修「ANAグループビジネススクール」、国内外の様々な部署への公募制度などを始めとして、グローバル人財育成などにも取り組んでいます。
人材育成で活用したいツール・サービス
人材育成の取り組みで活用したいツールやサービスを紹介します。
Schoo for Business
Schoo for Businessは、法人・企業向けのオンライン研修・eラーニング研修サービスです。
講師は、ビジネスの最前線で働くトップランナーで、200種類以上の研修パッケージを抱えています。
部下用のプログラムを作成し、動画を通して学んでもらう環境を構築できます。
etudes Plus
etudes Plusは、約20年の人材育成ノウハウが詰まったeラーニングシステムです。
管理職向けにも26時間分の講座が収録されており、意識変革やリーダーシップ、目標達成など様々なコンテンツが用意されています。
自分の業務に合わせて受講できるため、使い勝手のよいサービスです。
Kakeai
Kakeaiは、本音を引き出し、1on1の属人化を防いで、組織に定着させる1on1ツールです。
1on1の時間を上手く活用できていない、定着できていないといった課題を解決する機能を提供しています。
経営戦略や将来的なビジョンを元に、人材育成の取り組みを開始しよう
今回は、人材育成における課題や目標・計画の立て方、企業事例などを紹介しました。
人材育成は、経営目標の達成のための必要なスキルや知識の習得、事業継続性を保ち、将来的なリスクに備えた力を養うために非常に重要な取り組みです。
今後、労働力人口が減少していく日本では、従業員1人1人の力が企業の業績を大きく左右します。
ぜひ、経営戦略や将来的なビジョンを元に、自社としての人材育成の方針を定め、人材育成の取り組みを開始しましょう。