HRテック/HR Techとは?領域や市場規模、主なツールまとめ
主に人事領域や総務領域の業務効率化やコスト低減などを目的に、HRテック(HR Tech)のツールが多くの企業で導入されており、HRテック市場は年々市場規模も大きくなり続けています。
コロナ禍でのリモートワークを可能にするために、勤怠管理ツールや労務ツールなどの導入が急速に進んでいるため、HRテック(HR Tech)のツールが既に自社に導入され始めているという方は多いと思います。
今回は、HRテック(HR Tech)の領域や市場規模、主なツールや活用メリットなどについて紹介します。
HRテック(HR Tech)とは?
HRテック(HR Tech)とは、Human Resources(人事)とTechnology(技術)を合体させた造語で、先進技術を活用することによって人事領域の業務を自動化や効率化することです。
従業員の採用活動や入社後の育成、タレント管理、労務など人事領域でやるべきことは非常に多岐に渡ります。
また近年はペーパレス化も進んでいるため、データやクラウドで管理する必要性がますます増しており、HRテックのサービスもどんどん増えています。
HRテック(HR Tech)の主な領域
HRテック(HR Tech)は、非常に幅広い範囲を含んでいますが、その中でも主な領域について紹介します。
採用管理
採用管理システム(ATS)は、求人情報の管理や応募者の情報管理、応募から採用に至るまでのプロセス管理など、採用活動に関する情報を一元管理するシステムのことです。
採用管理システムによって、募集情報の管理が簡易化され、選考中の人やステータスの管理などを行えるなどのメリットがあります。
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採用管理システムとは?導入メリットや比較検討ポイントを紹介
エンゲージメント計測
エンゲージメントを計測する組織サーベイシステムは、従業員に定期的にアンケートに応えてもらい、エンゲージメントの結果指標や間接指標を計測します。
組織サーベイで定期的に社内のエンゲージメントを調査することによって、職場の改善点を把握できるだけでなく、従業員の不調や退職の予兆などもデータで検知できることもあります。
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組織サーベイツールの主な機能や選定時の比較ポイントを紹介
エンゲージメント向上
エンゲージメント向上を支援する各種ツールは、組織サーベイシステムと合わせて活用することによって、効果が上がります。
自社の組織課題を把握し、自社の組織の特性を把握することで、適切なエンゲージメント向上の打ち手が打てます。
エンゲージメント向上システムといっても、社内コミュニケーションからアプローチしたものやミッション・ビジョンの浸透からアプローチしたものなど非常に幅広い種類のものがあります。
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エンゲージメント測定・向上ツール25選、特徴・比較点まとめ
タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、従業員(タレント)が持つスキルやノウハウ、能力を経営資源として管理し、人員配置・人員育成、人事評価に活用することで、会社の業績向上と従業員のリテンションを両方実現することです。
タレントマネジメントシステムによって、クラウド上でタレント情報の管理やシミュレーションなどを行えます。
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タレントマネジメントとは?目的やメリット、項目例を紹介
勤怠管理
勤怠管理システムは、スマホやPCから打刻、有休残業申請が行える他、管理者は従業員の勤務時間・残業時間を管理できるシステムのことです。
従業員は、スマホやPCから簡単に出退勤の打刻を行えたり、管理者も残業時間管理や有休取得日数の管理なども同じシステムで全て行えます。
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勤怠管理システムの主な機能やメリット、比較ポイントを紹介
給与計算
給与計算システムは、従業員の毎月の給与や社会保険料、税金の計算を自動で行うシステムのことです。
勤怠システムと連携することによって、勤怠状況を加味した上で給与計算を自動で行い、人の手で計算する必要も無くなります。
↓給与計算システムを紹介した記事はこちら↓
給与計算システムの主な機能や比較ポイント、おすすめツールを紹介
人材育成
人材育成とは、知識習得・スキルアップの支援や従業員が自立して行動できるような指導を行うことを指します。
人材育成に関するHRテックは、従業員のスキルを登録して人員配置に役立てたり、将来的に期待する役割から逆算して育成計画をシステム上で管理したり、クラウド上で研修動画の視聴を可能にするようなシステムがあります。
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部下育成とは?方法や悩み、課題と取り組みのポイントまとめ
人事評価
人事評価システムは、目標設定や期中の面談内容、評価実績のデータを保存するとともに、評価シートの作成・配布・回収と人事評価に関する業務を一元管理するシステムです。
従業員の評価を入力、管理するだけでなく、部署やチームごとに評価データを比較したり、目標と進捗の管理を一覧化するといったことも可能です。
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人事評価システムの主な機能や比較ポイント、おすすめツールを紹介
社内コミュニケーション
社内コミュニケーションツールとは、仕事を行う中で社内でコミュニケーションを取るために使用するツールのことです。
ビジネスチャットやWeb会議、仮想オフィス、社内SNSなどを活用することによって、コミュニケーションの円滑化や情報共有の簡易化、ログの蓄積などを行えます。
対面でのコミュニケーションも大事ですが、それ以外でも情報共有やコミュニケーションを取りやすくする仕組み作りも重要です。
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社内コミュニケーションツールとは?機能、効果、比較点まとめ
メンタルヘルス
メンタルヘルスケアツールとは、全ての働く人がいきいきと働けるように、「心の健康状態」の不調の予防、不調の早期発見、対処を行うことや行うためのツールです。
メンタルヘルスケアは、教育、不調の検知、セルフケアなどが非常に重要で、アプリで専用のツールを活用することによって、問題が小さい内に対処できる可能性が上がります。
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メンタルヘルスケアに使えるツール・サービスの種類と活用方法を紹介
HRテック(HR Tech)の市場規模
HRテック(HR Tech)の市場規模を紹介します。
デロイトトーマツミック経済研究所が2023年2月13日に発刊した「HRTechクラウド市場の実態と展望 2022年度版」によると、HRTechクラウドソリューション市場は、下記のような成長が予想されています。
- 2021年度:584.7億円(前年比:131.6%)
- 2022年度:785.6億円(前年比:134.4%)
- 2023年度:1,052.8億円(前年比:134.0%)※予想
全てのカテゴリで市場規模が拡大していくことが予想されており、引き続き高い成長率で市場規模が拡大し続けることが予想されています。
HRテック(HR Tech)導入によるメリット・効果
HRテック(HR Tech)を導入することによって期待できるメリットや効果を紹介します。
人事領域のデータの一元管理
HRテック(HR Tech)を導入することによって、従業員の情報や組織の情報をシステム内で管理できます。
これまで紙で管理していたり、複数のシートで管理していたものもシステム上で管理できるようになります。
人事業務の自動化
これまで自分で手を動かして行っていた業務もシステムを活用することによって、自動化できるものもあります。
また、システム同士で連携している場合、データのエクスポートやインポートも行うことなく、自動で行われるため、人の手を動かす作業が格段に減ります。
コスト低減
HRテック(HR Tech)の導入や運用には費用は発生しますが、HRテック(HR Tech)を活用することによって業務が自動化・効率化されることによって、業務のアウトソーシングが必要なくなったり、人の工数を他のところに充てられるなど全体で見た時にコストが低減されます。
ヒューマンエラー防止
人の手で行う作業は、計算ミスや参照ミス、勘違いなどによってどうしても完璧ではありません。
特にミスが許されない給与計算などであれば、何回も確認を行う必要があり、膨大な工数が発生します。
しかし、HRテック(HR Tech)の勤怠管理ツールや給与計算ツールを活用し、設定さえ間違えなければ基本的にミスは発生せず、ヒューマンエラーを防止できます。
分析精度の向上
HRテック(HR Tech)では、各システムで定量的なデータを保持するため、社内の組織に関するデータがどんどん増えていきます。
分析は、データ量や範囲が多いほど分析の精度が上がるため、何か分析をする際の精度が向上します。
HRテック(HR Tech)導入時の注意点
HRテック(HR Tech)導入時における注意点を紹介します。
全体像を描いた上でツールを選定する
HRテック(HR Tech)のツールを導入する際は、まずは自社の業務の棚卸しを行い、その上で業務フローや業務範囲などを基に、ツールを選定します。
部分最適でツールを導入してしまうと、ツールでできることが重なってしまったり、一部を手作業で行わないといけなくなったりと全体の効率化が思ったよりもできない可能性があります。
ツール同士の連携の有無を確認する
HRテック(HR Tech)は、特にツール同士の連携による業務の自動化やデータの連携が重要です。
ツールによって連携しているツールが異なりますので、全体像を描いた時にどうデータのやりとりを行うのか、業務を自動化させるのかを考えながらツールを選定することがおすすめです。
ツールに依存しすぎない
全てをHRテック(HR Tech)のツールに頼らないことも重要です。
制度設計やカルチャーの醸成などは、企業が主体的に取り組み、あくまでもツールは運用を効率化・自動化させるものです。
ツールに全てを任せるのではなく、人が考えたり手を動かすべきものは人が動くようにしましょう。
各ツールのセキュリティ対策を確認する
HRテック(HR Tech)で扱う情報は、従業員の個人情報や組織の業績・活動に絡む重要な情報です。
外部に漏洩しないことはもちろん、社内でも必要な人にのみ情報を開示するような仕組み作りを行うために、各ツールのセキュリティ対策の内容を確認しましょう。
HRテック(HR Tech)の主なサービス
HRテック(HR Tech)の主なサービスをいくつか紹介します。
カオナビ
カオナビは、人材データベース、人事評価、社内アンケート等の機能を有するタレントマネジメントシステムです。
従業員の情報を一元管理し、人材配置や人材育成、モチベーション分析などを行えます。
システムも使いやすく、セキュリティ対策をきちんと講じていること、ユーザーコミュニティ・ヘルプページなどサポート体制が充実していることも選ばれる理由です。
KING OF TIME(キングオブタイム)
KING OF TIME(キングオブタイム)は、国内シェアNo.1の勤怠管理システムです。
カードタッチや顔認証、GPSなど非常に様々な打刻方法があり、機能も豊富に搭載しているため、要望通りにシステムの活用が行いやすいです。
また、初期費用不要、1人あたりの利用単価が安いのも選ばれる理由の1つです。
freee人事労務
freee人事労務は、勤怠管理や給与計算から年末調整、入退社手続きなどの業務までを行えるシステムです。
人事労務に関する多くの業務を1つのシステム内で行えることが強みです。
SmartHR(スマートエイチアール)
SmartHR(スマートエイチアール)は、年末調整や雇用契約などの労務手続きだけでなく、人事評価や社内アンケートなど、人事業務に至るまで、人事労務のあらゆる業務を効率化するツールです。
労務管理システムとして、国内No.1のシェアを獲得しており、機能の充実度、使いやすさなどで良い評判のツールです。
THANKS GIFT(サンクスギフト)
THANKS GIFT(サンクスギフト)は、従業員同士で感謝や称賛を伝え合うサンクスカードのサービスです。
機能は、サンクスカードだけでなく、社内掲示板、社内チャット、景品交換機能、アンケートなど組織作りにおいて必要な機能が揃っています。
飲食店や冠婚葬祭などのサービス業で導入されるケースが多く、店舗スタッフへの情報共有やスタッフ同士の人間関係の構築などで利用されています。
クラウドサービス口コミサイト「ITreview」のピアボーナスのカテゴリーで一番高い顧客満足度を獲得しており、利用実績が多いだけでなく顧客からの評価が高いことが特徴です。
ベネフィット・ステーション
ベネフィット・ステーションは、パッケージ型の福利厚生代行サービスです。
従業員は、レジャー・旅行・グルメ・ショッピングなど様々な場面でお得にサービスを受けられます。
大手企業・上場企業・公官庁などを中心に法人会員数は1500万人、導入企業も1600社を超えています。
Carely(ケアリー)
Carely(ケアリー)は、人事・産業保健スタッフのための健康管理システムです。
従業員のエンゲージメントを向上させるためには、従業員の心身の健康を良好な状態に保つことが重要です。
Carelyは、健康診断、ストレスチェック、産業医との面談管理などをはじめとした情報の一元管理や業務の効率化を行い、健康経営を推進します。
HRテック(HR Tech)ツールを活用し、業務の効率化、コスト低減、パフォーマンス向上を実現しよう
今回は、HRテック(HR Tech)の領域や市場規模、主なツールや活用メリットなどについて紹介しました。
HRテック(HR Tech)ツールは、導入時の注意ポイントに気を付ければ非常に大きな効果が見込める投資になります。
ぜひ、自社の業務の棚卸しを行った上で、自社に適したツールの導入を進めてください。