男性育休とは?制度の内容や取得率、企業の対応ポイントまとめ
2022年4月の育児・介護休業法の改正により育休に関する情報の周知やと意向確認の義務化、従業員1,000人以上の企業は、育休取得率の公表が義務化されるなど、男性育休の取得推進を国が力を挙げて推し進めています。
企業としても男性社員の育休取得に関して対応すべきことが大きく増えて、自社の従業員でも取得する人は今後ますます増えることが予想されます。
今回は、男性育休制度の内容や取得率、企業の対応ポイントなどについて紹介します。
男性育休とは?
男性育休とは、配偶者との間に子供を授かり、子育てや家事を行うことを目的に取得する休暇のことです。
2021年に育児・介護休業法が改正、2022年10月に出生時育児休業(産後パパ育休)が制定されて、男性でも育休が取れるような制度・環境が整いつつあります。
育休は、育児休暇と育児休業の2つに分けられ、意味や内容が異なりますので、どちらを指しているのか注意が必要です。
男性育休の取得率や取得日数の状況
厚生労働省が発表した「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)によると、従業員数1,000人超の企業1,472社の内、男性の育休取得率は46.2%ということで、半分近くの企業で育休が取得されていました。(分母は前事業年度に配偶者が出産した男性労働者がいる企業)
育休を取得した男性社員の平均取得日数は、46.5日で、男性の育休等取得率が高いほど、平均取得日数が短くなる傾向にあると分かっています。
男性の育休に関する制度
男性の育休に関する制度を4つ紹介します。
育児休業(給付金)
育児休業は、子どもの出生日から1歳の誕生日の前日まで育児休暇を取得できます。
また、保育園に入園できなかったなどの理由があれば、2歳の誕生日の前日まで育児休暇を延長することも可能な制度です。
育児休業給付金は、育児休暇の期間中に支給され、育児休業開始から6ヶ月までは育児休暇取得前の給与の約67%、それ以降は約50%に相当する金額の手当を受け取れます。
パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスは、共働きで両親ともに育児休暇を取得し、育児休暇をずらす、もしくは少し重ねて取得することにより、パパかママのどちらかが1歳2ヶ月まで育休取得期間を延長できるという制度です。
例えば、ママが子どもの出生日から1歳の誕生日前日まで育休を取得し、そこから1歳2ヶ月の誕生日までパパが育休を取得するといったことが可能です。
産後パパ育休(出生児育児休業)
産後パパ育休(出生児育児休業)は、子どもの出生後8週間以内で4週間(28日間)が上限で取得できる育児休業です。
一括か2回に分割して取得することもでき、労使協定を締結と労働者との合意の範囲で時間数に上限はありますが就業可能です。
子の看護休暇制度
子の看護休暇制度は、子どもの看護のために休暇を取得できる制度です。
小学校に入る前の子どもが1人の場合は年5日、2人以上いる場合は年10日の取得が可能で、時間単位でも取得できます。
男性育休制度を導入・公表するメリット
企業が男性育休制度を積極的に導入したり、その結果を公表することによるメリットを紹介します。
助成金による金銭的な援助
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)では、下記2つの場合を満たす中小企業に助成金が支給されます。
- ①男性が育児休業を取得しやすい「職場環境の整備」「業務体制の整備」に取り組み、子どもの出生後8週間以内に開始する連続5日間以上の育児休業を取得した男性労働者が出た場合
- ②①を受給した事業主において、3事業年度以内に育児休業取得率の数値が30ポイント以上上昇した場合
支給金額や条件などは年度によって変わることがありますので、最新情報は厚生労働省のホームページ等でご確認ください。
従業員の帰属意識向上
従業員が連続で仕事を休むのは、他の社員に負担をかけたり、お客様に迷惑をかける可能性があるなど、なかなか自ら取得することを打診するのは難易度が高いです。
しかし、企業側から育休取得を推奨し、取得を促すことによって、従業員の育休取得のハードルが大幅に下がります。
育休を取ることによって、会社へのエンゲージメントや帰属意識が向上することが期待できます。
優秀な人材の確保
男性社員も育休が取れる実績があることによって、その点を懸念した離職や応募・内定承諾辞退を減らすことができ、優秀な人材の確保に繋がります。
採用面においても会社の魅力度の指標の1つとなり、採用面でも良い効果を期待できます。
業務の属人化を撤廃
育休で連続した休みや長期で休みに入る場合、業務を誰かにやってもらう必要があります。
会社として育休だけでなく、介護や看護などの休みを気軽に取れる環境を用意する場合は、業務を属人化させては仕事が回らないため、できる限り平準化することが必要です。
仕事の進捗状況の可視化、マニュアルの整備、業務の自動化などを進められれば、仕事の属人化を減らし、休みが取りやすくなります。
男性育休制度における課題
男性育休は、取得率や取得日数は増えているものの、まだまだ課題は少なくありません。
男性育休制度における課題を紹介します。
企業の男性育休に関する理解が低い
男性育休取得率は、従業員数1,000人以上の大企業であっても半分にも満たず、中小企業であればさらにその割合はさらに低くなります。
男性が育休を取ることに対して企業側の理解が得られないケースもまだまだあります。
従業員側は取得期間中は減給になってしまう
男性育休は、育児休業中も給付金による支援があるものの、最大でも育児休業前の67%とこれまでよりも減ってしまいます。
特に出産前後は出費もかさむことが多いため、育休を取れる制度や環境があったとしても従業員側が取得を躊躇うことも少なくありません。
企業内で男性育休の認知度や活用度を上げる方法
自社内で男性育休に関する認知度や活用度を上げる方法を紹介します。
男性育休制度に関する方針の発信
男性育休取得の内容や取得の流れ、内容・日数など、自社としてはどのように考えているのかを発信することが一番、男性育休の取得率に影響を与えます。
従業員に聞かれて情報を提供するのではなく、企業から育休に関する考え方や方針について開示・発信しましょう。
男性育休制度に関する相談窓口の設置
男性育休制度に関する相談窓口を設置しておくことで、誰にまず相談すれば良いのかが明確になり、従業員としては非常に助かります。
最初に上司に確認すべきか人事なのか誰か分からなければ、育休取得に関する疑問を解消しにくいです。
誰か特定の人や部門を指定して、相談窓口を設置しましょう。
男性育休制度に関する情報や事例の発信
男性育休制度の取得実績や取得内容などを開示することも、育休取得の推進に効果があります。
自社では、昨年度どれくらいの人がどういった内容で利用したのかが分かれば、自分はどの程度取得するのかを決める際の参考になります。
男性育休制度に関する研修の実施
大手企業など男性育休制度の対象者や興味がある人がある程度の数がいる場合は、対象者向けに研修を実施することも方法の1つです。
一気に大人数に情報を提供でき、1人1人対応するよりも効率的です。
人事部門からの取得意向の確認
従業員からの育休取得の相談を待つのではなく、対象者に育休取得の意向があるのかを直接・書面・メールなどの方法で確認することも効果的です。
企業側も早い段階で意向を確認しておくことで、人員調整を行いやすく、業務を円滑に回すことにも繋がります。
男性育休の認知度・取得率を向上させ、従業員が定着・活躍できる組織を作ろう
今回は、男性育休制度の内容や取得率、企業の対応ポイントなどについて紹介しました。
男性育休は国も力を挙げて取り組んでおり、今後取得率はますます上がることが予想されています。
男性育休を取得しづらい企業では、従業員の離職の要因になってしまう可能性もあります。
ぜひ、男性育休制度について社内の認知度や取得率を向上させ、従業員が定着・活躍できる組織を作ってください。