退職慰留とは?引き止め方法やポイント、注意点まとめ
高いパフォーマンスを発揮する優秀な従業員、会社の重要なポストを担う管理職など、会社に高い価値貢献を行う優秀な人材ほど会社は手放したくないものです。
日頃から組織作りに力を入れて、離職の要因を解消し続けても、様々な理由で職場を離れる事象も発生してしまいます。
どうしても退職してほしくない人材には、双方が納得いく形で会社にい続けてもらえるよう退職慰留の打診や提案をすることも会社や事業運営には必要なことです。
今回は、退職慰留の目的や引き止め時の方法とポイント、注意点などについて紹介します。
退職慰留とは?
退職慰留とは、従業員から退職する旨の相談や報告を受けた際、もしくは退職の兆候が見受けられた際に理由を聞いて、会社に留まってもらえるように提案や説得をすることです。
優秀な従業員や重要なポストに就いている役職者であれば、業績の低下や他の従業員への影響が大きいため、会社や部署としては自社に残ってほしいというのが本音です。
具体的には、ヒアリングを行ったり、雇用条件や仕事内容の変更の提案、キャリアビジョンの策定などといったことが行われます。
退職慰留を行う目的と必要性
退職慰留を行う目的は、重要な従業員が退職することで、会社や他の従業員に与えるマイナスの影響が大きいためです。
退職慰留を行うことは、慰留される方はもちろん慰留する側も負担やストレスは大きいです。
それでも、退職慰留を行うことの必要性を紹介します。
1.会社の売上・利益が低下する可能性がある
高いパフォーマンスを発揮する従業員や売上・利益の柱となる事業部のトップが退職をした場合、会社の売上・利益が低下する可能性があります。
会社の売上・利益が低下することは、会社の資産繰りに影響を与えたり、事業の継続性が担保できないなどの経営に直結する非常に大きな問題です。
そのため、会社の存続に影響を与える可能性がある場合は、退職以外の選択肢が取れないかを会話し、提案することは非常に重要です。
2.他の従業員への負担増やモチベーション低下に繋がる
会社のキーマンとなる人やハイパフォーマーの方が退職することによって、他の人に業務のしわ寄せが発生したり、重要な人物がいなくなってしまってモチベーションが下がってしまうということも考えられます。
引継ぎする人をすぐに新規採用できれば負担は軽く済みますが、人材採用が難しい昨今の状況であれば、その状態が長く続くことも考えられ、他の従業員の退職に繋がってしまうリスクも少なくありません。
3.特定の分野や業務に精通している場合、引継ぎができない
従業員が特定の分野や業務に対して、専門的な知識を有していたり、特定の資格保持やスキルを保持している場合は、業務の代替可能性が低く、業務の引継ぎができないことも考えられます。
その場合、仕事が減ってしまったり、会社の成果物のクオリティ低下なども避けられず、売上や利益の低下に直結してしまいます。
4.新規採用の工数やコストが発生する
従業員が退職してしまい、その人がやっていた業務を行う必要性がある場合は、新規採用で代替することが必要です。
その場合、新規採用を行うための広告出稿や人材紹介などの費用が発生し、また社内でも面接対応などで工数も発生します。
中小企業では、数百万円の採用費を払うことが容易でなかったり、採用業務専属の人がいなかったりしますので、非常に大きな負担となります。
↓辞めて欲しくない従業員が辞める原因や対策をまとめた記事はこちら↓
辞めて欲しくない従業員が辞める影響、原因と対策まとめ
退職慰留は難易度が高い理由
退職について上司に相談・報告する時点では、他の企業の内定を保持していたり、ある程度考えがまとまったタイミングであることが多いです。
退職の流れから見ても、自分の考えをまとめる→情報収集をする→転職活動を行う→今後の方針が決まる→退職の報告・相談を上司に行うというように思考や行動が変わっていくため、退職の報告や相談の時点で慰留することは、タイミングが遅い可能性が高いです。
退職の兆候が見られたタイミングであれば、まだ退職慰留を行うことの効果は大きいかもしれませんが、退職の報告から覆すのは難易度が高いです。
退職慰留を行う際の方法とポイント
退職慰留を行う際の方法とポイントについて紹介します。
従業員の話を傾聴する
退職慰留を行う際に、一番重要なことは、従業員の話を聞くことです。
なぜ退職を考えているのか、今後はどういったように考えているのかなどをまずは聞きましょう。
何も聞かずに、退職慰留の説得をした所で根本の退職理由が解決できなければ、一次的な処置で終わり、すぐにまた退職してしまう可能性が高いです。
従業員の話を遮ったり、否定しない
従業員の話を聞く際は、途中で話を遮ったり、否定して説得することはNGです。
そういった姿勢であれば、従業員も正直に話をできなくなってしまいます。
まずは従業員の話を聞くこと、会社側からの慰留の提案はその場で判断せず、一度持ち帰っても良いので、退職理由や今後の方針についてまずは理解しましょう。
退職理由や原因の解決策について話し合う
退職慰留の話し合いの場では、退職理由や原因の解決策に焦点を当てて、話し合うことが重要です。
従業員の話を聞いた上で、提案を行い、話し合いの中で妥協点を探ったり、解決策を一緒に見つけていくことが求められます。
退職慰留の提案をして終わりではなく、具体的にどうすれば会社にい続けてもらえるのかをお互いに話し合う場にしましょう。
会社にい続けてほしい旨を伝える
退職慰留では、会社はあなたのことを必要としており、会社に残ってほしい旨を伝えることが非常に重要です。
なぜあなたのことを必要としているのか、今後はどういうことを期待しているのかを伝えることで、退職を考えていたことを考え直すきっかけになるかもしれません。
できれば、普段の1on1から同様のことを伝えるのが理想ですが、伝えていない場合は、退職慰留の場ではっきりと伝えましょう。
他の従業員には知られないようにする
退職慰留をしていることやその内容は絶対に関係者以外に知られてはいけません。
少しでも内容が他の従業員に伝われば、従業員からの信用が無くなってしまいます。
他の従業員に漏れることが無いように情報管理や会議の設定は慎重に行いましょう。
従業員の主な退職理由・原因
日本企業における主な離職理由を紹介します。
厚生労働省が発表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」を元に、転職理由として多い理由・原因を男女別に紹介します。
男性の離職の原因・理由ランキング
- 定年・雇用契約の満了:15.2%
- 労働時間・休日等の労働条件が悪かった:9.1%
- 職場の人間関係が好ましくなかった:8.3%
- 給料等収入が少なかった:7.6%
- 会社の将来が不安だった:7.1%
※その他の理由を除く
女性の離職の原因・理由ランキング
- 定年・雇用契約の満了:10.9%
- 労働時間・休日等の労働条件が悪かった:10.8%
- 職場の人間関係が好ましくなかった:10.4%
- 会社都合:7.0%
- 給料等収入が少なかった:6.8%
※その他の理由を除く
↓日本企業の離職率や離職の原因について紹介した記事はこちら↓
日本企業の離職率の平均は?業界別平均、計算方法、高い理由まとめ
理想は、退職慰留ではなく、退職の予兆のタイミングでフォローすべき
従業員の離職や退職を止めたいのであれば、退職の打診や相談を受け手から退職慰留をするのではなく、退職の予兆が見受けられたタイミングでフォローする方が、効果もありますし、かかる労力も少なくて済みます。
退職の予兆を見極めるのは難しいですが、日頃から何か変化が見受けられた際に、「どうしたの?」と気軽に声をかけられる関係性を構築することが重要です。
また、日頃行っている1on1でも、期待している役割について言葉で説明したり、今後のキャリアについての話を行うなど、会社や上司が考えていることや期待を伝えることも重要です。
退職の予兆を検知する方法
退職の前兆を完璧に把握することは難しいですが、従業員の気持ちやストレス状態の変化に気づく・把握する方法について紹介します。
- 気軽に声掛けできる関係値を作る
- 変化や異常が見られたら、どうしたのか聞く
- 定期的に1on1を実施する
- 勤怠情報の変化を確認する
- 組織サーベイで定量的に把握する
- ストレスチェックのスコアや変動を確認する
従業員の離職率・退職率低減に活用したいツール
従業員の離職率・退職率の低減に活用したいツールを紹介します。
ラフ―ルサーベイ
ラフ―ルサーベイは、ウェルビーイング経営を実現するために、組織と働く個人の可視化と行動変容を促す組織改善サーベイです。
19問のショートサーベイと144問のディープサーベイ、自社独自のオリジナル設問を元に組織の状態をや自社の良し悪しをダッシュボードで表示し、その後の対策サービスをレコメンドしてくれます。
2種類のサーベイを組み合わせて活用することにより、離職の予兆を早期に検知して対処すること、会社の課題を特定して対策することの両方が行えます。
wevox
wevoxは、「従業員の心理状態や特性、組織のカルチャー等」を可視化し、エンゲージメントが高い組織づくりを支援する組織サーベイツールです。
個人のストレスやコンディションを把握し、AIがフォローのための最適な打ち手の考察を補助してくれる機能もあります。
THANKS GIFT
THANKS GIFTは、サンクスカードや社内掲示板、社内チャットなど、社内コミュニケーションを行う様々な機能を有する社内コミュニケーションツールです。
サンクスカードのやりとりの枚数が減っている場合は、他の従業員との関わりが減っていたり、組織への関心が低下している可能性が高いです。
離職の予兆の1つの指標として確認しておきたいです。
従業員が定着・活躍しつづける仕組み・環境を作ろう
今回は、退職慰留の目的や引き止め時の方法とポイント、注意点などについて紹介しました。
従業員が定着・活躍し続けるためには、組織をより良くするために改善を重ねること、何か問題が発生した際に検知できる仕組みを作ることが必要です。
退職慰留を行うことも時によっては必要ですが、大前提として管理職が部下に向かい合うような風習を作り、企業も組織作りに力を入れることが重要です。
ぜひ、ITツールや文化醸成、ルール整備などで従業員が働き続けられる仕組み・環境を作りましょう。